英文和訳とプロ翻訳はどう違う?① In his pocket he had an eggどう訳す?

英語力アップと通訳養成は一直線でつながる

本来それが自然。
そんなトレーニングに断片的な「お教材」はいりません。
おすすめは古今東西の民話、昔話のストーリーテリング。
謎めいたストーリーは微生物ゆたかな土壌のよう。
これで鍛えておけば報道、学会の通訳は簡単なもの。

みんなを利口にするわけのわからない変人、ナスルディン

いま大学で取り組んでいるのが中東のトリックスター、ナスルディンのシリーズ。
ふるさとがいまいちはっきりせず、トルコはじめ中東諸国が「うちだ」と
言い張っているのも面白い。日本でいえば吉四六さんでしょうか。
利口か馬鹿か、親切か意地悪か、さっぱりわからないナスルディン
利口か馬鹿か、親切か意地悪か、さっぱりわからないナスルディン。By Unknown – Topkapi Palace Museum Library Cat. No. 2142

この人、利口か馬鹿か、親切か薄情かさっぱりわかりません。
聴く者を終わりのない「?」のうちにほったらかしてくれます。

そう、優等生な答えを与えて人を考えなくさせるよりよっぽどありがたいんです。

答えは古びても問いは古びませんからね。

今週のストーリー/「まずは覚える」にチャレンジ

A wag met Nasrudin. In his pocket he had an egg.
“Tell me, Mullah; are you any good at guessing games?”
“Not bad,” said Nasrudin.
“Very well, then: Tell me what I have in my pocket.”
“Give me a clue, then.”
“It is shaped like an egg, it is yellow and white inside,
it looks like an egg.”
“Some sort of a cake” said Nasrudin.
すらすらと唱えていたSさん。
A wag met Nasrudin. He had an…と言ったところで声が止まりました。
そしてIn his pocket…と言い直したのです。
「どうして言い直したの?」
「もともとそうじゃなかったし…感じが違うと思ったんです。」
そうそう、いいですねえ!みんな、その「感じ」の正体は?

違和感を説得力にできるのがプロ

その「感じ」が「感じ」のままだと個人の私的な趣味と思われる。
「理性」の言葉で語れるのがプロ。私的な趣味じゃなくて説得力になる。
で、その着眼、説得力がその人の流儀になる。
じゃあ、この訳はどう?
『彼は卵をひとつポケットに入れていました』
『彼はひとつの卵をポケットに持っていました』
「先生、それ悪い例ですよね。」
そう、中学の英文和訳だったらバツにはならないかもね。
そんなことやってるからダメなんだけど、そのことはまた後日。
いずれにしても翻訳としては不合格。
このニュアンスの違いは?
John gave this ticket to me.
John gave me this ticket.
こういうの「同じ」「書き換え可能」ってbullshitですからね。

全く同じ単語、表現は2つとしてない。すべて唯一。

物語の重心を占める卵。そのことは構文に現れています。
物語の重心を占める卵。そのことは構文に現れています。

イメージの順に敏感に

そして人間ってイメージが浮かんだ順に言葉を語るもの。
新しくて、大事なことは後でご登場。
この順番を勝手に変えると主役と脇役が変わってしまう。
聴いている、読んでいる人が船酔いしてしまう。
歌だってイントロがあってからサビ。
落語だって前座、二枚目のあとに真打。
これ、別に文法や構文の約束ではなくて、もっと自然でしょ?
さあ、In his pocket he had an egg.の真打は?
「あ!そういうことですね。卵がこのストーリーの重心!」
そうそう!
いろんな例が出てきました。
『ポケットには卵がひとつ』
『そのポケットには卵がひとつ』
『ポケットの中には卵がひとつ』
『ポケットに入っていたのは卵』
どれもイメージ順を守っています。これこそ同時通訳の土台です。
みんなまずは合格!

こんなに簡単な1文で言葉と人間についてこれだけの気づきがあるんです。

女子大生にはなれないけれど、じっくりやってみたい方はこちらへどうぞ。

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