どうしても宿題を出せと言われたら


お子さんの宿題、ごっそり残っていませんか?

むかしむかし、私がまだ東京のとある私学で英語を教えていたころ、心底たまげげたことがあります。親御さんも、古株の先生もこう言うんだもの。

「先生、もっと夏休みの宿題を出してください。単語集とか、英文法ドリルとか。そうしないと勉強しないんです。」

なに、この学校では不信から宿題出しているの?

そんなの出したってやらないし、続かない。せいぜい最後の数日、突貫工事に親を巻き込むだけ。のちに路面崩落。

もっと心に火がつくことはないの?

それでも出せっていうなら出しますよ。

①外郎売の口上を暗誦、ひとに聴かせてお金取れるレベルまで稽古しなさい。
②YouTubeにある立川志の春さんの落語を日本語、英語両方で聴いて、どれかひとつ、そっくり真似ができるまで稽古しなさい。
③お家の手伝いをしなさい。
④近所のお年寄りのお手伝いをしなさい。(外郎売と落語をきいてもらいなさい)
⑤お父さん、お母さんのお仕事場を見つからないようにこっそりのぞきにいきなさい。
⑥困っている海外の人を見つけたら、英語でも日本語でもいいから声をかけなさい。ただし自分の英会話の練習のつもりで困ってもいない人に声をかけるのは行儀悪いからやめなさい。

①②は9月に近所の介護施設で発表会をします。

③以降はできる範囲で続けてください。

学びは人の役に立ってこそ。自分だけのためだと思うと力は出ないもの。

自分だけのために学び続けられる人って、私は波長合わない。

ごっそり残っている宿題をやっつけるには役に立たない話ですみません。

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同時通訳は神業じゃない?!

「同時通訳って大変でしょ。語順が違うのに大変よね。神業だわ。」

ニヤリ。そういうことにしておきましょう。

実は、私にはそんなことないのです。何も私だけが特別なことをしているわけでも特別なセンスがあるわけでもありません。

ただ、シンプルな原則を尊重しているだけです。

「ひとは思いついた順に声に出す。声は時に逆らわない。」
たったこれだけのこと。

だって…「さきに浮かんだイメージを取っておいて、あとから浮かんだイメージを先に言って最後に先に思いついたイメージを付け足す」なんて読むだけでも面倒なこと、とっさにしていると思います?

私には無理。

イギリスに伝わるとあるお話のはじまりで試してみましょう。仮にイメージごとに番号を振ります。

There was once a ①farmer ②on his way to ③sell his horse ④at Cambridge market. He ⑤had risen early and set out ⑥when the flat fields were till clagged with cold mist. But as he ⑦climbed the road ⑧where it ran steep ⑨over the hill at Grantchester, ⑩the sun rose too, ⑪broadening the day.

【ひっくり返し訳例】むかしむかし、農夫がケンブリッジに市が立つ日に雌馬を売りに行きました。農夫は、まだ夜明け前の朝霧が平原をしっかり包み込んでいるうちに家を出ましたが、グランチェスターを過ぎ、丘へ向かって坂道を上るころには、太陽も登り夜が明けました。

これでは①④③②⑥⑤⑨⑦⑩⑪。原文が特に強調しているわけではない「夜明け前」と「日の出の後」の対比を強調しているようにも聞こえます。

これでも中高の英文和訳ならマルが貰えてしまう。

それが悪循環の始まり。

翻訳だってこんなもんだろうと思ってしまう。読みにくい訳文が世の中にあふれる。世間も翻訳はそんなもんだ、仕方ないと思い込む。残念!

【なるべく順番通り訳例】むかし、とある農夫が雌馬を売ろうと向かっていたのはケンブリッジの市。早起きして家を出たとき、平原はまだしっかりと冷たいもやに包み込まれていました。けれどのぼり坂が急になりグランチェスターの丘を越えるころ、日が昇り、朝の光が広がったのです。

こちらは①③②④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪ 時間の流れのとおりです。書き言葉っぽさが残っていますが、落語調にしたらもっと流れのとおりでしょう。

人間はイメージが浮かんだ順に声にする。イメージの順そのものに意味がある。イメージの順を変えるとストーリーが変わる。

ひっくり返し訳を手放せないとしても、そこで終らないでほしい。次はイメージの順訳にチャレンジ、そしてもとの英語に戻ってほしい。そうでないと日本語で別物を理解して終わったことになる。

さて、次のセミナーでは中高生の学習から通訳養成を一本化するヒントをお話しします。「日本の英語教育はおかしな袋小路が多すぎる。もう時間とお金を無駄にせず、しっかり学んで、人の役に立ちたい。」そう願うみなさんをお待ちしています。

9月17日 通訳の先生が語る「英語学習と通訳養成を一本化する学習科学の理論と実践」

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高校野球は聖戦?ウルスラって誰?

いや~、福島聖光がんばりました。福島聖光といえばプロテスタントで野球の名門校。横浜のカトリックの聖光とはずいぶん雰囲気も違います。(でも聖光ブラザーズで楽しくおやりくださいな。)

まあ、今日の対戦相手、宮崎の聖心ウルスラとはユニフォームもよく似ていること。目、ぱちくりしました。

さて、ウルスラって誰?

アンナ、マリア、カタリナ…こういう感じならわかるけど。

ウルスラ?

もともとはラテン語でurus+l+a でめすの子熊、熊子ちゃんのこと。

そんな名前がついたブレトン族のお姫様が今のイギリス南西部におりました。異教徒である未来の夫をたずねて11000人の乙女たちと旅立ったところ、ケルンを制圧していたフン族にライン河畔で打ち首になったという…

え?ちょっとスケールがファンタジーどころでないのでは?

11000人の召使をつれてイギリスからドイツへなんて今だって想像を絶します。ジャンボ機を何台分?それって無理じゃない?ほんと?

このお話、3世紀、7世紀、9世紀と時代もまちまち。11人のキリスト教徒が殉教したとか、11歳の女の子が殉教したとか…あまりにバリエーションが幅広くて、1970年にはカトリック教会も聖ウルスラの日(10月21日)を取り消しにしたほど。

つまり事実なの?でっちあげなの?

いや、たぶんそういうことではないのです。史実かどうか、どのバリエーションが事実に近いか、なんてあまり大事なことではないのです

バリエーションのすべてがそれぞれの思いを語っている。思いがあって生まれたバリエーションもある。バリエーションのなかの人物、土地、数は思いが込められた象徴。野球の勝ち負け、スコアのようなものさしとは違う世界。

なかには北欧の豊穣の女神、乙女の死を受容する女神、フレイヤの変形、なんていう説もあります。

さて、このごろ「フェイクニュース」が話題です。そもそもニュースがreal and trueでありえると前提するほうが無邪気ではないかと思いますがね。あと300年経ったら、あの人と、あの人の名はどんな思いを込めて語られるんだろう。

同時通訳上映会「ルドルフ・シュタイナーの挑戦」8月26日残席わずかです

 

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