AIに追いつかれない通翻訳って…

AIの進歩により、いまある多くの仕事が消え去るとか。通訳・翻訳もその中に入っています。まあそれはそのとき。時代が求める役割を担っていけばいいだけのこと。「失業する!!」という不安はありません。

でもちょっと悔しい!通・翻訳は楽しみ、喜びの多いプロの職人技です。みすみす全部AIに持っていかれたくはありません。

AIの弱みは意味と非文字情報の理解とか…それこそ私が理屈っぽくこだわり続けているところ。

たとえば次のお話の出だしの1文を訳してみましょう

The Monk and the Scorpion

Once a monk sat on the banks of the Ganges River with one of his students.

As they watched the water flow by, a large scorpion making its way along the steep banks fell into the water and began to struggle and drown.

Without hesitation, the monk reached in and pulled the scorpion from the water.
As he placed it on the bank it stung his hand.

Several minutes later this same scorpion fell again into the river and commenced to drown. Again the monk reached in and again was stung as he set the scorpion on the bank.

A third time the scorpion fell and a third time it was retrieved by the monk with the same results.

The student could no longer restrain himself. “Master, ” he asked, “why is it that you keep saving that beastly scorpion from drowning?” Can’t you see that itis just going to sting you?”

“Yes, I know it is going to sting me,” laughed the monk. “It is the dharma of a scorpion to sting. But it is my dharma to save.” (from Doorways to Soul by Elisa Davy Pearman)

 

Once a monk sat on the banks of the Ganges River with one of his students.「あるとき、とある僧が弟子のひとりと共にガンジス川の畔に座っていました。」

まあ、これでも中学の英文和訳なら〇がもらえます。(だから英文和訳の延長のつもりで翻訳に手を出してやけどする気の毒な人、そんな翻訳読まされてアタマこんがらがる気の毒な人が続出。)

では、★Once a monk and one of his students sat on the banks of Ganges River.では景色はどう変わってきますか?

人間はイメージの浮かんだ順に言葉を並べ、新しいこと、余韻を残したいこと(次の先触れになる)をトリ、文末におく。これ、自然ですね?

以上の2つの文は「トリ」が違います。

★の文で余韻にひろがる景色はガンジス川の流れ。

もとの文のトリは「弟子」です。どうも気になる。

その余韻の内に彼の眼を通して物語をながめてみましょう。すると、結びの方で「自分を抑えきれなくなる」ほど緊張が高まるのも唐突ではなく自然に感じられます。そして師の笑い声と答えで一気に弛緩。

laughedは声をあげて笑うこと。笑い声が聞こえていれば、ただ「笑った」と訳していては落ち着かないはずです。

さて、そのつもりで訳すと…こんな訳文もあるのでは?

超訳でも意訳でもありません。仕込み、伏線をできるだけ意識したメタ訳とでも言いましょうか。まだまだこれで完成ではありませんが。
「むかし、ある僧が腰をおろしていたのはガンジス川のほとり。そばには弟子がひとりおりました。」

あなたならどう訳します?

ひとは言葉と声で心の中の風景を描く。通翻訳者もそうありたいものです。

文字を文字に置き換えるのならAIが得意…あれれ?

「一度修道士が彼の学生の一人とギャングズ川のほとりに座った。」

まだしばらく大丈夫そうです。ほッ…

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