オバマ大統領広島演説⑩-〇〇力を大切に

ここはリンカーン大統領のゲティスバーグ演説(これの通翻訳は後日別稿にて)が透けて見えて仕方ないところ。今日は2つご紹介します。

We see these stories in the hibakusha –- the woman who forgave a pilot who flew the plane that dropped the atomic bomb, because she recognized that what she really hated was war itself; the man who sought out families of Americans killed here, because he believed their loss was equal to his own.

My own nation’s story began with simple words:  All men are created equal, and endowed by our Creator with certain unalienable rights, including life, liberty and the pursuit of happiness.  Realizing that ideal has never been easy, even within our own borders, even among our own citizens.

But staying true to that story is worth the effort. It is an ideal to be strived for; an ideal that extends across continents, and across oceans. (段落の途中でごめんなさいよ)

まずおおっ、と思うのは、平和のために「我々が語るべき物語」を指さしながら、それが「すでに被爆者たちによって語られている」という構成。

これ、リンカーン大統領も使っています。「①我々がAするのは誠にまっとう。(中略)いやいや、すでに彼らがみごとにAしている。我々はとてもとてもかなわない。」

リンカーン大統領の場合、このあと「②むしろ彼らのBという使命が未完なんだから、我々はBをがんばろう。」というトリプルアクセルみたいなワザで、北軍勝利は世界的、地球的意味がある!とかなんとか壮大に鼓舞しています。なんという高揚感!(でも、日本は幕末でそれどころじゃなかったと思いますけど。)

オバマさんは②のすり替え鼓舞はしません。「A(=戦争をなくし、平和を創りだすような物語を語ること)は難しいけれど、みんなでがんばろう」と続けます。そのぶん静か、内省的です。

ふたつめは独立宣言の一部を引用。ここもゲティスバーグ演説の冒頭で引用されています。ほらね、青字のところ。
“Four score and seven years ago, our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in liberty and dedicated to the proposition that all men are created equal.”

この演説を聴きながら、「おお、やっぱりゲティスバーグを踏まえている。でも時代、事情が違うと、なるほど、ここはこう違ってくるのか」と思えると深く、楽しくなります。

そう、大切なのは「連想力」。

前回の投稿の通り、大統領演説の生同通はすべきでないと思います。でもどうしても頼まれたら、過去の大統領名演説も準備のひとつとしてすべて通訳練習するでしょうね。

さて、次はゲティスバーグ?あるいはトランプさん?どちらがいいでしょうねえ。

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オバマ大統領広島演説⑨-生同通が減ったわけ

このごろテレビで「同時通訳」のテロップを見かけなくなったと思いませんか?

専門分野の学会では会議通訳として同時通訳が入ることはよくあります。専門分野ですから話題にも限りがあって十分対応できます。レトリックもそれほど複雑ではありません。

ところがテレビはどうでしょう。大谷君が二刀流で新人王、アメリカ国境で移民がもめごと、スーチーさんがロヒンギャ問題で…などなど多岐にわたります。準備しようがない緊急事態もあります。

以前、イラク戦争開戦時、イギリスのブレア首相(当時)に記者が「お友達のドミニク君に何て言うの?」と尋ねたことがありました。あたかも行動を共にするかのようだったフランスにどう説明するの、とドミニク・ドビルパン外相(当時)の名前を持ち出して質問したのです。英仏の連携の稚拙さを揶揄する意図もあってのことでしょう。

で、TVの通訳さん、止まってしまったのです。関係諸国の関係はもちろん、閣僚をフルネームで覚えておけば対応できたでしょうけれど。

大統領演説ともなればレトリックも凝っています。多くの人の心に響くよう、たとえも多様です。

これを生同時通訳するのは至難のわざです。

今は各テレビ局で同時通訳をつけ、その後新聞各紙が翻訳を出しています。それぞれに良いところもあれば、残念なところもあります。(YouTubeで視聴できる例:FNNSlineの動画はこちら 今日の分は14:20ぐらいから)

ただ、大統領演説です。超プロのスピーチライター集団と大統領自身の努力を考えれば、「すべて良し」でなくてはもったいない。

私が大統領だったら、事前にプロの同時通訳の録音、プロの翻訳者による和訳を準備させます。あるいは各国の外務省に原稿を送り、同じことを依頼します(こっちのほうが安上がりだ)。

翻訳は太陽光を分光するのに似ています。青が強い訳、赤が強い訳…いろいろあればあるほどもとの光に近くなる(といいんだけど)。

ただ、大統領演説くらいは公式訳が準備されていいのでは、と思います。

トランプさんはまあいいか。

私が生同通を依頼されたら?まずは上記の通り事前対処を打診します。不可能な理由に納得出来て、ほかに誰もいなかったらお受けするかもしれません。エージェントには入っていないので、まずそんな声はかからないと思うけれど。

でもね、できないことをできないと認識するのって大事ですよ。できてないことがわからない、できた気になってしまうのはアマチュアだからね。

今日のところはこちら。reimagine「再び思い描く」が新鮮です。

We must change our mindset about war itself –- to prevent conflict through diplomacy, and strive to end conflicts after they’ve begun; to see our growing interdependence as a cause for peaceful cooperation and not violent competition; to define our nations not by our capacity to destroy, but by what we build.

And perhaps above all, we must reimagine our connection to one another as members of one human race.  For this, too, is what makes our species unique.  We’re not bound by genetic code to repeat the mistakes of the past.  We can learn.  We can choose. We can tell our children a different story –- one that describes a common humanity; one that makes war less likely and cruelty less easily accepted.

同時通訳は日ごろのこまやかな仕込みがものをいいます。

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はじめてのブラックフライデー

ブラックフライデー=収穫感謝祭の次の金曜

いや、もうすごいですね。ネット通販、大手小売りに国境はないようで、日本でもブラックフライデーなんて言うようになりました。よく言われる由来はこんな感じでしょうか。

「収穫感謝祭の次の日がクリスマス準備の買い物の初日。大安売りの書き入れ時でそれまでさっぱり儲からなかったお店も『黒字』になる。」

こんなふうにコンパクトにまとまったのは最近のようですよ。

もっとブラックなアメリカ最初のブラックフライデー

ブラックと言えばブラックマンデーを思い出す方が多いのでは。どうやらその感覚は間違っていないようです。いまわかっている限りでは、1869年9月24日がその日。Jay Gould と Jim Fiskというウォールストリートの腹黒2人が金を買いまくり、値を釣り上げて売り抜けて大儲けしようと企みました。この陰謀を知ったグラント大統領は国庫から金を大放出。相場は暴落して多くの資産家、企業がとんでもない被害を被ったといいます。

その後、いろいろな説が出てきて…木曜から日曜まで4連休したい労働者が病欠しまくるので会社は困るとか…フィラデルフィアが買い物客でごった返しておまわりさんたちがうんざりしたとか…

最近ではイギリスでもアマゾンをはじめアメリカ企業の影響でブラックフライデー=お買い物と定着してきているそう。私がリーズ大学にいたころは影も形もありませんでしたが。

世界初のブラックフライデーは11月ではなく…

11月にブラックフライデーときいて「え?」と思いました。春じゃなくて…?そう、ブラックフライデーはそもそもイエス・キリストが十字架にかけられた日。お買い物どころではありません。忌引きです、喪中です。

1869年のウォールストリートの人たちも十字架にかかった気分だったのではないでしょうか。

こちら、ヒストリーチャンネルのサイトにも詳しい記事がのっています。
What’s the real history of Black Friday?

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オバマ大統領広島演説⑧-「逃げるは…役に立つ!」

同時通訳の自主練におすすめの方法!

通訳に詳しい方にご質問いただきました。「冠木さんのオバマ大統領通訳は同通ですか?放送通訳ですか?」おお、するどい。ぶっつけ本番1回限りの同通とは違います。録画の7倍の時間でスクリプトを作ってそれを読み上げアテレコ放送通訳とも違います。

まず英日の語源、引用をさかのぼって何通りも訳を用意します。ビデオを再生しながら何回か試します。

そして!用意した訳をえいっと全部後ろにほっぽりなげてビデオ再生&録音。ほっぽりなげた言葉の中から何が蘇ってくるかは耳だけが知っている、という境地です。

贅沢な同通とでも申しましょうか。

なにごとも練習と本番のバランスが大事。練習だけでも本番だけでも独りよがりになりがちです。私はこの練習法が「突貫工事」になりがちな同時通訳に余裕を生むと感じています。通訳者のみなさん、おすすめですよ。

さていよいよキーフレーズの登場です。新聞各紙でもサブタイトルに引用されたあの一節。「恐怖の論理を逃れ…escape the logic or terror」の部分です。まあ、ひとまずさらっとどうぞ。

Still, every act of aggression between nations; every act of terror and corruption and cruelty and oppression that we see around the world shows our work is never done. We may not be able to eliminate man’s capacity to do evil, so nations –- and the alliances that we’ve formed -– must possess the means to defend ourselves. But among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear, and pursue a world without them.

We may not realize this goal in my lifetime. But persistent effort can roll back the possibility of catastrophe. We can chart a course that leads to the destruction of these stockpiles. We can stop the spread to new nations, and secure deadly materials from fanatics.

「恐怖の論理を逃れる、脱する」の新しさをコロケーションで

この演説のキーフレーズともいえるescape the logic of terror。「恐怖の論理を逃れる、脱する」で訳としては〇です。でもちょっと待って。何か気になりませんか。logicとescapeという組み合わせ、見たことがない気がするのです。

そこで使うのがコロケーション辞典。連語辞典とも言われます。セットで使われる言葉を調べるのに重宝です。たとえば、日本語では「涙」を「流す」とセットにしますが、tearとセットになるのはflowよりshedです。

さて、logicの前に来る動詞は肯定的なものだと…apply, use, accept, follow, seeなど。否定的な意味でもdefy(抗う), challenge(挑む), question(疑う)など「真正面から対決」するニュアンスの動詞が挙げられています。

一方、escape=ex(外へ)+cap(頭のかぶりもの)=外套を脱ぎ捨て逃げる、です。対決する気は全然ありません。

これは面白い。

恐怖の論理を「克服すべき敵として対決」するのではありません。仮に恐怖の論理がこちらを敵としてやっつけようとしても「あれれ?あいつらどこいったんだ?」となり戦いが成立しない、という構図でしょうか。

さて、核兵器をめぐってそんなうまいことができるのでしょうか。

脱走の目的地をもっと鮮やかに思い描きたいものです。ふと、ロトの妻を思い出しました。

(ロトの妻は堕落したソドムの町を脱出する際、天使の「振り向くな」という戒めをうっかり破り、塩の柱になったというお話。創世記19章)

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シュタイナー関係の通訳について思うこと

「わかってる」ってどういうこと?

「○○さんの通訳は良いの。シュタイナーわかってるから。それにボランティアでやってくれるし。」

こういうの、多いんですよ。ウンザリしますね。それでも満面の笑みで言われると「あなたたちがその調子だからだめなんだよ。」とは言いにくくなりますけど。

別に「冠木さんはわかってない」というつもりでないのはわかっています。いや、「冠木さんはわかっていない」のほうがいいかも。いや、私も十分「シュタイナー関係の身内」でしょうし、「専門用語がちゃんと出てくるわかってる人」と思われていることでしょう。でも、「わかっている」つもりなんてないのです。アントロポゾフィーに限らず、ある分野を知れば知るほど未知の領域が広がるばかり。「学んでいます。励まされています。」とは言えたとしても。

ひとのことを「あの人わかっている」ってどういう意味だろう?

たぶん、海外のナニヤラカレッジなどに留学してコースを修了、そのまま在住してその関係の仕事もしていて、「自分よりわかっているはず」。専門用語もすらすら出てくるしね。まあ、こんなところでしょう。

春の芽吹きは凍てつく冬に準備してこそ。スウェーデン、イエルナにて。

主催者も聴衆も楽をしている

つまり、楽なんです。主催者は通訳してもらう分野を通訳者と打ち合わせをする必要がない。聴衆はクリティカルに訳を聞く必要がない。たとえ通訳者が聞こえなかったところをたまたま知っていた専門用語でつくろったとしても。

むろん、無駄な骨折りは必要ありません。でも、なにか本気でやろうとしたらアマチュアの仲間どうしで「楽」をしていたら黄色信号。

プロはプロと組み、参加者に最善の貢献をしようと真剣です。

シュタイナー関係でも医学関係は卒倒するほどの資料を提供してくれます。録音、録画もして、病名の言い間違いなど許されません。

この夏からご縁のあるオステオパシーの講座はさらに多くの資料を提供し、直前まで私のような門外漢の質問にも丁寧に答えてくれました。

オーガニックオリーブオイルの商品発表会での通訳のために、実際に購入しようとするとプレゼントとして全種類が送られてきました!私がJAS規格や国際的なオリーブオイルの基準まで頭に入れて臨んだのは言うまでもありません。

これらの分野で私は猛勉強の門外漢。「私はわかっていません」ので組む相手のプロに質問しまくります。そしてどうしたらこの商品、サービスがよりよく活きるだろうとコンサル的視点で俯瞰しています。終わった後でも情報提供は惜しみません。

異質のプロ同士が組むと掛け算になります。地の塩、世の光にはこの掛け算が大切では。

確かに、通訳養成は受けていなくても、アントロポゾフィーに生涯をかけていて、素晴らしい訳をなさる方もあります。私も大好きな方が数人います。

でも、主催者はシュタイナー関係で通訳を依頼する時、手抜きしすぎていませんか?いつ、だれがどの形式で通訳するか、ちゃんと想定していますか?なじみの仲間でもきちんとした打ち合わせをしていますか?

聞いた話ですが…ある講座でプロの通訳ではない方が日本人参加者の自己紹介のときに沈黙。海外講師が置いてきぼり。同通ウィスパリングが必要なことを確認していなかったのでしょう。その場になって「できないからやらない」だったようです。

え?プロの通訳に頼んだら散々だった?

通訳の出来栄えは通訳者の力量だけでなく、事前に主催者が本気で関わったかどうかが反映されます。

その通訳者に事前に会いましたか?本を渡すだけでなく、思いを伝えましたか?あなたにとってのアントロポゾフィーを自分の言葉を尽くして語りましたか?

医学、オステオパシー、オリーブオイルはちゃんとやっていました。

プロ通訳者は言葉に体験そのものと同等のインパクトを感じる異能集団です。言葉を尽くす人をアントロであるなしにかかわらず尊びます。

彼らに通じなかったら、なおさら世には…

私はシュタイナー関係の通訳をサイマルやNHKに在籍する通訳者に依頼し、事前に仕込み、あの通訳口調を直させ、結果として関係者を唸らせる自信があります(彼らの人生も変わるかも)。

実際そうしないのは、自分の仕事を回してもしょうがないから。

私は、シュタイナー関係であるとないとによらず、自分の生きる時代にしっかり地に足をつけて社会貢献したいと願うプロと、これからも手を組んでまいります。

これを書いた人のプロフィール

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オバマ大統領広島演説⑦-complacencyどう訳す?

Complacentな茹でガエル?

イギリスに留学してすぐあちこちでこんなふうに耳にした言葉、complacent.

「イギリス人はcomplacentになりがちだから、気をつけなくちゃね。」
「いやねえ、イギリス人ってcomplacentで。」

ラテン語源的にはcom(強意)+placent(喜び、喜ぶ)でおおいに結構な感じですが、実は「ちんまり満足している場合じゃないときに外を見ず、内向きに満足しちゃう」態度を戒めて使う言葉です。

この言葉をオバマ大統領が使っています。「45年8月6日の朝を想い起すことで鵜我々はcomplacencyと戦える」の一節です。

とっさに思い浮かんだ訳語は「茹でガエル」です。いまもイメージはピッタリだと思います。でも、いくらなんでもねえ、フォーマル度、オフィシャル度がずれてます。

ううむ。「現状肯定」「自己満足」「独りよがり」「周りに関心を寄せない」「周りが見えてない」「内向き」「いつかまずいことになる」やっぱり茹でガエル。

現状肯定、自己満足だけでは「それじゃまずいよ!」のニュアンスが落ちます。日本語では「知足」という語もありますしね。

こういうときは因数分解(数学的には違うかな?)あるいは分身の術。

形容詞+名詞=「おろかな+現状満足」としてみました。(やっぱり茹でガエルが気に入っているのだけど。)

よく英語1語を日本語1語に訳すものと思い込んでいる人が、こういうやり方を「言葉を足している」と誤解します。違います。ピンク=赤+白のようなものです。もともとない色をお節介で足すのとは全く違います。

Someday the voices of the hibakusha will no longer be with us to bear witness.  But the memory of the morning of August 6th, 1945 must never fade.  That memory allows us to fight complacency.  It fuels our moral imagination.  It allows us to change.

And since that fateful day, we have made choices that give us hope.  The United States and Japan forged not only an alliance, but a friendship that has won far more for our people than we could ever claim through war.  The nations of Europe built a Union that replaced battlefields with bonds of commerce and democracy.  Oppressed peoples and nations won liberation.  An international community established institutions and treaties that worked to avoid war and aspire to restrict and roll back, and ultimately eliminate the existence of nuclear weapons.

メディアはオバマ大統領の「complacency」をどう訳したか。

まずは産経さん。
「しかし1945年8月6日の朝の記憶は決して風化させてはならない。記憶はわれわれの想像力を養い、われわれを変えさせてくれる。」

ありゃ?見当たりません。

ハフポストさん。

「いつの日か、証言する被爆者の声が私たちのもとに届かなくなるでしょう。しかし、1945年8月6日の朝の記憶を決して薄れさせてはなりません。その記憶があれば、私たちは現状肯定と戦えるのです。その記憶があれば、私たちの道徳的な想像力をかき立てるのです。その記憶があれば、変化できるのです。」

「現状肯定」なんですね。外を見てない感じ、現状誤認の茹でガエルのニュアンスがあるといいですね。

英語の先生もがんばっていますね。あるヘルプサイトの方です。

「いつか証言する被爆者の声は私たちのもとからいなくなってしまうでしょう。しかし、1945年8月6日の朝のあの記憶を決して薄れさせてはいけません。その記憶は、私たちを油断と闘わせてくれます。その記憶は私たちの道徳的な想像をかき立てます。その記憶は私たちを変わらせてくれるのです。」

「油断」ですね。この方は辞書を引きまくるのではなく、ご自分で想像して言葉を探されたのでは、と思います。

好ましい努力の跡を見つけると、嬉しくなるものです。

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私がシュタイナー関係の通訳をするようになったのは

シュタイナー関係の通訳を手がけるようになって14年が経ちました。英語を聞いた瞬間に、鮮やかなイメージと共に心の底から感動と喜びが湧きあがり、日本語を語りながら身震いし、聞いて下さる皆さんの眼差しに感動する…そんな瞬間が数えきれないほどありました。本当に通訳冥利につきる、ありがたい思い出です。

そもそも…シュタイナーとつけばどんな講座でも駆け付けていた17-14年前、ある塾(バレバレ?)の研修にまぜてもらったのが始まりです。

オーストラリア出身のシュタイナー学校教員を通訳していたのはアメリカのシュタイナー学校に通ったことがある日本人男性。「英語が分かる」「その分野の経験がある」とはいうけれど、とても苦しそう。四角いものが丸くなるような日本語でした。

彼を否定したいわけではない。でもせっかくの海外講師のワークショップがこのままでは。なんのための渡航時間?渡航費?宿泊費?

さいわい、扱っていた理科の実験は中1~2のころ学校で楽しんだものばかり。糖に硫酸をかけたり、生石灰に水をかけたり…燃焼や炭素輪廻がテーマでした。おそるおそる補助のコメントをしたものです。

「君がコメントするとくもりガラスが晴れるみたいにすっきりする。もっとやって!一体、君は何者?え、卒業生?プロの通訳者?うちに来て!」

次の回から私が通訳するようになりました。

そして驚くべき自由を与えられました。この会社に籍をおいたまま、有休などの手続きはなしで、あちこちでシュタイナー関係の通訳をするように、というのです。

「シュタイナー関係は『わかっている』『留学したことがある』身内の『英語、ドイツ語ができる人』が通訳をすることが多い。でもまずいことが多すぎる。学びの質の最後の決め手は通訳だ。きっとプロの謝礼は出ないだろう。でも、まずい通訳を多くの人が受け取るのは残念。ここの仕事と思って出かけてきたら。」

すごいチャンスがあるものです。喜んでいろんなところにお邪魔しました。

そして気づいたのです。

お金がない、というサークルはもっとお金が無くなる悪循環にはまっているのだと。

イベントのタイトルが独り言。対象者がぼけている(ラブレターの宛名が無い)。参加費が安すぎる。学びのイメージがぼけているので定員もない。チラシも独り言。商品スペック説明ばかり。実は大量消費時代ぽい文言。そして告知が遅い。

これじゃ人は集まらない。

趣味の同好会を卒業して社会貢献を願う団体ならなんとかしなくては。私がアマチュアボランティアみたいな謝礼を受け取り、給料で補填してもらっていてはだめ。かくいう私も昔はお金関係は得意ではありませんでした。他人ごとではなかったのです。

やがて双申さんの経営シミュレーション「トータルゲーム」やマーケティングのY’s Clubに出会いました。

なかなかプロフェッショナリズムが理解されない日本のシュタイナー関係。でもつぶれてはどうしょもない。武士でもないのに高楊枝はいけません。

まもなく、健全経営を願うシュタイナー関係のみなさんのためにちょっと面白い本を出します。乞うご注目。

冠木友紀子プロフィール

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オバマ大統領広島演説⑥-シンボルを壊さないで

大統領演説はプロのスピーチライター集団と大統領本人が推敲を重ねたもの。少しずつ丁寧に「虫の目」で味わうと興味深いもの。でも長さも相当なので、つい「鳥の目」的な受け取り方をしがちです。メディアは競ってすぐに日本語訳を出さねばならないようで、ちょっとお気の毒です。(後日「虫の目」連載記事も可能なはずですが。)

さて今日のところもさすがです。「想像する」はあいまいに使い回されがちな言葉ですが、ここではリアリティがあります。「子どもたちが目にした光景」「声なき叫びに耳をすませる」など具体的に感覚を呼び起こしているのです。(これを某VAK理論だなどと浮かれるのはお門違い。あれはエセ科学です。)

【冠木同通】(原稿読み上げじゃありません。)

That is why we come to this place. We stand here in the middle of this city and force ourselves to imagine the moment the bomb fell. We force ourselves to feel the dread of children confused by what they see.

We listen to a silent cry. We remember all the innocents killed across the arc of that terrible war, and the wars that came before, and the wars that would follow.

Mere words cannot give voice to such suffering. But we have a shared responsibility to look directly into the eye of history and ask what we must do differently to curb such suffering again.

さて、ここでも「あら?ゲティスバーグ演説みたい!」と思う部分があります。
ゲティスバーグでは…
「ここに集まったのはこの戦地の一片を終の憩いの地として奉献するため」=当初のタスク
「でも真の奉献は戦士たちがすでにやっている。我々の出る幕じゃない」=課題の提起
「我々がすべきことは…」=新たなタスク

オバマさんも…
「ここ広島に集まったのはいろいろ想像するため」=当初のタスク
「それだけじゃ声なき叫びに声を与えられない」=課題の提起
「責任を共有して行動を変えることが大切」=新たなタスク

これから英語スピーチコンテストに出る学生さんも参考にしてみてください?!

ハフポストさん、レトリックやシンボルに気づいていますか?

「私たちは、声なき叫び声に耳を傾けます。私たちは、あの悲惨な戦争が、それ以前に起きた戦争が、それ以後に起きた戦争が進展していく中で殺されたすべての罪なき人々を追悼します。言葉だけでは、こうした苦しみに言葉に表すことはできません。」(ハフポスト)

声は存在感そのものを象徴する語。せっかく「声なき叫び声」とはじめたのに、「言葉だけではこうした苦しみに「言葉に」表すことはできません。」で終わってはもったいない。それにこの訳では「馬から落馬して落っこちた」みたいに「言葉」が出過ぎです。「言葉に表す」ではなく素直に「声を与える」でよいのです。余計なことはしないに限ります。

産経さんも、「声」をいじっています。熟語を因数分解しすぎるとシンボルがくずれます。silent cryが「無言」になっています。ここでは「言葉」がないのではなく、「声」さえ聞こえない、存在が認識されていないのだと思いますが?give voiceが「苦しみを表す」と意訳されていて、声というシンボルが消えています。

「無言の泣き声に耳を澄ませる。われわれはあの恐ろしい戦争やその前の戦争、その後に起きた戦争で殺された全ての罪なき人々に思いをはせる。

単なる言葉でその苦しみを表すことはできない。しかし、われわれは歴史を直視し、そのような苦しみを繰り返さないために何をしなければならないかを問う共通の責任がある。」(産経)

スピーチは語られるもの。堅い書き言葉にすることはないと思います。

シンボルに気づく訳は直訳ではありません。レトリックとスタイルを大切に。
通訳はさかしらな「我」を抑え、すなおに受け止める訓練です。

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オバマ大統領広島演説⑤-係り結びを活かす

日本語は最後まで聞かないと否定文か肯定文かわからない、と聞いたことはありませんか。

そんな馬鹿なことありません。

人間の言語はよりよいコミュニケーションを願って洗練され続けています。

よりよいコミュニケーションの鍵は「聴き手、読み手の予測を容易にすること」。できるだけ長く先まで、できるだけ精確に予測できるようにする。すると、コミュニケーションそのものに調和、穏やかさが生まれます。たとえ意見が対立していて討議が必要だとしても、です。

日本語は、声調、係り結びなど否定・肯定のいずれかを予測させる要素を豊かに備えています。

【冠木同通】

Every great religion promises a pathway to love and peace and righteousness. And yet no religion has been spared from believers who have claimed their faith has ①a license to kill.

Nations arise telling a story that binds people together in sacrifice and cooperation, allowing for remarkable feats, but those same stories have so often been used to oppress and dehumanize those who are different. Science allows us to communicate across the seas, fly above the clouds, to cure disease and understand the cosmos. But those same discoveries ②can be turned into ever more efficient killing machines.

①a license to kill
007を思い出しますね。強烈なキーフレーズが文末で残響します。なるべくこのフレーズを日本語でも文末に響かせたいもの。

②「しかし同じ発見は、より効率的な殺人鬼界へと変えうる。」(東京新聞)
「しかし一方で、そうした発見はより効率的な殺人マシンへと変貌しうるのです。」(ハフポスト)
→「しかし、そうした発見は転じてより効率的な殺しのマシンとなりうるのです。」

東京新聞さんは主述が?です。全体的に英文和訳調のハフポストさん、ここは「一方で」を入れてみたのですね。(翻訳全般としては東京新聞さんのほうが語彙もレトリックも豊かですが、ここはあと一歩。)

ここではcan be turnedを「転じて~うる」としてみました。英語の述語部分を係り結びの「係り」にすると、最後まで述語が出てこない英文和訳調のじれったさ(予測しにくさ)を軽減できるのではないでしょうか。英語の動詞を日本語の動詞、主語に「は」「が」をつけたところで翻訳したことにはならないのですよ。

欲を言えば受動態であることで発見そのものが主体となってではなく、あくまでも人為で、ということを表現したいものですが。このへんで一息、お茶を濁してミルクティーでもいただきます。

今週もそれぞれの持ち場でよい働きができますように。

皆さまの疑問が私の宝です。ご遠慮なくお寄せください。
例)なぜ西洋言語は大文字と小文字があるのですか?
こちらからどうぞ。

 

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オバマ大統領広島演説④-nature 本質?自然?

週末、いかがお過ごしですか?

私は相変わらず、「英語ができる社員に通訳を頼んだら散々だ」のようなご相談が舞い込んで「そりゃーそうだろう」と思いつつ、どうしたらいいものか、と思いめぐらしています。

さて、オバマさん4回目。

困りましたねえ、Natureは大文字だったりそうでなかったり。音声ではわかりません。

でもこれはひどい。

「そして人間の本質と切り離して自分たちを定めたり、自分たちの意志に応じてそうした本質を曲げたりする能力といったものを私たちが人類として際立たせること―」

自分が何を言っているのかわかっているのでしょうか。

こうした通訳がプロとしてまだ残っていることが、一般のひとたちの通訳業への信頼を損なっているとしたら、切腹モノです。

冗談ではありませんよ。

医療の通訳なら人の命にかかわりますので。

いえ、政治、外交の誤訳ははるかに多くの人命損失、環境破壊につながりますので。

通訳道場★横浜CATS

 

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