オバマ大統領広島演説⑧-「逃げるは…役に立つ!」

同時通訳の自主練におすすめの方法!

通訳に詳しい方にご質問いただきました。「冠木さんのオバマ大統領通訳は同通ですか?放送通訳ですか?」おお、するどい。ぶっつけ本番1回限りの同通とは違います。録画の7倍の時間でスクリプトを作ってそれを読み上げアテレコ放送通訳とも違います。

まず英日の語源、引用をさかのぼって何通りも訳を用意します。ビデオを再生しながら何回か試します。

そして!用意した訳をえいっと全部後ろにほっぽりなげてビデオ再生&録音。ほっぽりなげた言葉の中から何が蘇ってくるかは耳だけが知っている、という境地です。

贅沢な同通とでも申しましょうか。

なにごとも練習と本番のバランスが大事。練習だけでも本番だけでも独りよがりになりがちです。私はこの練習法が「突貫工事」になりがちな同時通訳に余裕を生むと感じています。通訳者のみなさん、おすすめですよ。

さていよいよキーフレーズの登場です。新聞各紙でもサブタイトルに引用されたあの一節。「恐怖の論理を逃れ…escape the logic or terror」の部分です。まあ、ひとまずさらっとどうぞ。

Still, every act of aggression between nations; every act of terror and corruption and cruelty and oppression that we see around the world shows our work is never done. We may not be able to eliminate man’s capacity to do evil, so nations –- and the alliances that we’ve formed -– must possess the means to defend ourselves. But among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear, and pursue a world without them.

We may not realize this goal in my lifetime. But persistent effort can roll back the possibility of catastrophe. We can chart a course that leads to the destruction of these stockpiles. We can stop the spread to new nations, and secure deadly materials from fanatics.

「恐怖の論理を逃れる、脱する」の新しさをコロケーションで

この演説のキーフレーズともいえるescape the logic of terror。「恐怖の論理を逃れる、脱する」で訳としては〇です。でもちょっと待って。何か気になりませんか。logicとescapeという組み合わせ、見たことがない気がするのです。

そこで使うのがコロケーション辞典。連語辞典とも言われます。セットで使われる言葉を調べるのに重宝です。たとえば、日本語では「涙」を「流す」とセットにしますが、tearとセットになるのはflowよりshedです。

さて、logicの前に来る動詞は肯定的なものだと…apply, use, accept, follow, seeなど。否定的な意味でもdefy(抗う), challenge(挑む), question(疑う)など「真正面から対決」するニュアンスの動詞が挙げられています。

一方、escape=ex(外へ)+cap(頭のかぶりもの)=外套を脱ぎ捨て逃げる、です。対決する気は全然ありません。

これは面白い。

恐怖の論理を「克服すべき敵として対決」するのではありません。仮に恐怖の論理がこちらを敵としてやっつけようとしても「あれれ?あいつらどこいったんだ?」となり戦いが成立しない、という構図でしょうか。

さて、核兵器をめぐってそんなうまいことができるのでしょうか。

脱走の目的地をもっと鮮やかに思い描きたいものです。ふと、ロトの妻を思い出しました。

(ロトの妻は堕落したソドムの町を脱出する際、天使の「振り向くな」という戒めをうっかり破り、塩の柱になったというお話。創世記19章)

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