AI翻訳がまだやらない、プロ翻訳者がやっていること

AI翻訳は日々進歩しています。ただ、今のところはハサミや包丁、楽器と一緒で使い方に工夫が必要です。

では、なぜひとつ前のブログでご紹介した「字幕をAI翻訳したからチェックだけお願い」の案件は難航したのでしょう。

実は、問題はAIの翻訳作業ではなく、その前の段階にありました。

英語のナレーション原稿がいまいちだったのです。

He was a curious man who was able to follow his own curiosity in those days.

これじゃ「馬から落馬して落っこちた」みたいじゃありませんか。

多くの日本人が、外国語、ことに英語を見るとフリーズして、そこにクセや弱みがあるとは思わなくなるようですが、あるんです。

日本語ができる日本人の誰もが日本語のプロではないように、英語が書ける人たちがみな、英語のプロというわけではないのです。

英語で学んだ人たちも、今日では大方、ロジカルなアカデミックライティングだ、スキミングやスキャニング読みだ、戦術モードです。

文体や語彙選び、響きの調整は「典雅で高尚、でも役に立たない趣味」とみなされがちです。

でも、そこなんですよ。「多くの人が知らない」けれど「人の心にすんなり届くために欠かせないコツ」は。

black woman with pen taking notes in planner
Photo by SHVETS production on Pexels.com

私が翻訳するときは、まずもとの英語を推敲します。もちろん必要に応じて著者に確認をとります。「まかせる!」と言われる場合がほとんどですが。

そういえば、国際基督教大学の恩師、斎藤和明先生も、アイヴァン・モリスの「The Nobility of Failures 高貴なる敗北」を訳しながら、史実、人物関係を調べ直し、50箇所も訂正していらっしゃいました。

翻訳者は校閲者、編集者でもあります。原文の傷やへこみを直してから日本語にするのは、筆者への敬意あってこそ。弱点ごと日本語で複製するほうがよほど失礼です。

さて、英語のまま読むのが苦手だからAI翻訳を使っているのに、英語の推敲や校閲なんてとても…と思われる方もあるでしょう。

ご自分の専門分野だったら、校閲はご自分の脳内でおやりになれば、まあ、よろしいかと。

推敲ですが、今は便利な推敲アプリがあります。Pro Writing AidやGrammarlyが知られています。アカウントを持っている大学では、これを通していない学生のエッセイは受け取らないところもあるくらいです。

推敲アプリだのみになると、前述の「戦術」に適うつまらない文になる傾向はあります。でも、少なくとも「馬から落馬して落っこち」たりはしません。

そのうち、翻訳アプリと推敲アプリが統合されるかもしれませんね。

私も Pro Writing Aid の生涯アカウントを持っています。申し込み確認のメールに期限が2059年とあったのには笑ってしまいました。そのころは遊んでいたいですが、もっと長生きする予定です。

次回はAI翻訳が向く分野、向かない分野をご紹介しましょう。

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