落語家と通訳者に通じるプロ、アマの違い

中高大学から市井の大人まで、落語同好会は大人気です。うまい人もいます。でも、その人をプロの落語家と呼ぶことには違和感がありませんか?

いくらうまくて器用で、笑わせることに長けていても、プロと呼ぶのはなんだか違和感があるもの。

そう、プロとアマの違いは「入門」したか。あるいはしていないかです。自分を壊し、消し、手放したことがあるかないかです。

立川志の春さんも、著書「自分を壊す勇気」で書いておいでです。

弟子入りするなり、志の輔さんに「俺を快適にしろ」と命じられ、どうしたら志の輔さんが快適になるかと四六時中思い巡らした。アメリカ仕込みの自己主張はなんの役にも立たず、手放し、自由になったと。

通訳も同じです。

ところが、依頼する方はそんなこと知りません。

「英語が話せるんだから通訳もお願いできる?」こんなリクエストに善意のつもりでうっかり応えてしまうアマは、通訳の道に入門し、自分を壊し、消したことがありません。

過去の延長線上の足し算でなんとかなると思っている。ところがよくあるのは10の実力しかないのに20を求められ、せいぜい15しか実現できなくても、「頑張った」自分を誉めたくなる。

プロ通訳者はいったん自分を消し、1000000…の言語の世界に出会っています。だから、自分の100の実力など無に等しいと思っている。だから、20求められたときにちょっと気を利かせて50応えてクライアントの期待を超えても、それが何か?

通訳は言葉と心の道です。この道に入門するとは、いったん自分を壊し、消す覚悟をすること。

英語が話せる人、特にアメリカの影響を受けた人たちの自己評価の高さ、自己主張の強さ、根拠のない自信はむしろ邪魔になる。

現在の学校教育に自分を消す機会はありません。

剣道、そろばん、書道といった日本のお稽古の道にはその可能性がまだあります。

せめて、通訳の道もそのようにありたいものです…

混迷の時代を生きる心を調える、賢治の言葉
1月パトリック先生のレクチャー(冠木の通訳聴けます)&諏訪先生の言語造形

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翻訳を磨くのは英和辞典じゃなくて…

みなさん辞書お持ちですか?電子?紙?

あ、電子派が多そうですね。

もしかして家庭の医学やビジネス法律関係の資料も入っている…?

でも、これは入っていないでしょう。
久々に紙の辞書を買って大満足です。
三省堂の「現代語古語類語辞典」。

通訳道場メンバーの悦子さんが教えてくれました。
いいもの見つけましたね~!!ありがとうございます。

私もこういうものをいつも探しているんです。

なぜって…皆さん、私の通訳の日本語表現に驚いて下さる。

振り返れば、その根は中高時代なんです。 文系、理系なんてケチなこと考えずに何でも学んだ。 自然科学、社会科学の日本語に触れ続けた。毎朝歌う讃美歌は文語。

そんな体験を、損なうことなく別の形で通訳を学ぼうという大人の方たちと分かち合いたい。なぜなら、出会った人たちの中にすでにある賢さ、宝が喜ぶはずだから。

(こういうもんだから覚えろ、みたいなことを我慢してると子どもの頃はいきいきしていた知性が昏睡、機能不全になるのです。)

この辞書は現代語が見出しになっていて、その見出し語の表現を上代から辿っています。日本語版超プチOEDのよう。 北欧の2つの昔話をハイブリッドにしたストーリーテリングの訳にも助かりました。

たとえば王子が馬で冒険の旅を始めて…
The prince rode for a long time, he rode for a longer time.

「王子は長い時間馬に乗った。彼はさらに長い時間乗った。」

学校の英文和訳ではこんなもんでもよしとすることがありますが、ダメですね。単語を単語に置き換えただけでなんの情景も見えません。

情景が見えない、というのは原文にあった文体のカテゴリが、日本語では失われたということです。

王子と馬が登場する情景を描くにはそれにふさわしいカテゴリの日本語が必要。

さて、程度を表すとき英語は時間(例 longer time)、日本語は空間(例「はるばる」)で表すことがままあります。あらいぐまラスカルの歌でも「ロックリバーへ遠乗りしよう」というフレーズがあります。でも、できれば「時間」で表したい。遠乗りじゃなくて「長乗り」、聞いたことあるけど、ほんとにあるかしら。

「馬」でひいてみると…ありました! さて、実際のストーリー訳がどうなっているかは近日発売CDブックをお楽しみに。

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あなたの翻訳を磨く本当の辞書は…?

正しく、美しく、読みやすい翻訳をしたいのに。
手間を惜しまず辞書を引いているのに。
なぜか自分の訳文が腑に落ちない、っていう時はありませんか?

そう、その感覚は素晴らしい。

そう感じることができるのは自分の読書経験全体と
今作った訳文を比べているからです。

辞書的に字面を作って、英文和訳として〇をもらえればいいや、
と思っていたらそんなこと気にもならない。

せっかく気になったのだから、徹底的に気にしましょう。

私も今、大切な友人のストーリーテリングCDを預かって
訳詞づくりに夢中です。
その物語は北欧の2つの古いお話を撚り合わせて
1つの新しい物語に蘇らせたもの。

イギリスでもマスター・ストーリーテラーと呼ばれる
ニックの語りもさすが生き生きとしています。
ニックの語りにふさわしい訳にしたい。

でも王子、馬、指輪、乙女、トロール…
普段お目にかからない方々ばかり…

馬に乗って、階段を登って、扉を閉じて…

間違いではないけれど、これでは動詞が平板。
物語の薫りを保つ決め手は動詞。
ありふれた動詞では物語の画素数が減って、
絵が荒れてしまう。

ええと、何をたよりにしよう…

ああ、「平家物語」。

じっくり読みたいところですがそれはまた後で。
こんなとき、昔習った速読法が役に立つのです。
(決して好きではありませんが)

さーっとスキャンすると、あっ、これこれ。
ちょっと怖いところですが…

「…太刀、長刀のさきにつらぬき、たかくさしあげ、夕に及ンで…」
(若宮出家より)

「(たかく)さしあげ」がここになじむかしら…
he took it from his pocket and held it up for them to see

1つ探せば1つ見つかるものではありません。
探しても見つからないこともあるし、
ぼうっと読んでたまたま覚えていた
一言がなじむこともある。

そういうもんです。

あなたの読書体験があなたの辞書。
あなたの日本語の土台を作った作品は何?
作家は誰?
必ずあるはずです。
まさかお母さんだけじゃありません。

自分の訳文が気に入らないときに戻るところを
いくつか意識しておくといいですよ。

こんな読み方、平家物語にはなんだか申し訳ないので、
いつか琵琶法師の語りを
拝聴したいと思っています。

このストーリーテリングCDに関心おありの方は
ご連絡先お知らせください。
準備整い次第ご案内いたします。
⇒ここをクリック

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