仕事で必要な英語がなかなか上達しないとお嘆きのあなたへ

「仕事で英語が必要。もっと英語ができれば可能性も広がるのはわかっている。」
「オンラインレッスンで場数は踏んでいるのに、なかなか英語が上手くならない。」
とお悩みではありませんか?

そんなあなたに1つお尋ねします。

closeup photo of primate
Photo by Andre Mouton on Pexels.com

ご自分の英語録音して聞き返したことありますか?

お手本と自分の録音を聴き比べて、これで良しと思うまで録音し直した事はありますか?

もしなければ今日からぜひ始めてください。スマホでもできるはずです。

なぜ?だって…鏡を見ないでお化粧した事はありますか?
鏡を見ないでネクタイを結んだ事はありますか?
ないでしょう?

人には自分で自分を修正する力があります。他人にとやかく言われるより、自分で自分のことが気になるのです。ひとりになって自分に向き合う力があるんです。その関心、力を「セルフモニタリング」と呼びます。そのための心強い味方が鏡や録音・再生器です。

セルフモニタリングなしで場数を踏んでも、お金がかかるだけです。

では何を聞けば?と思いますね。

どこの英語が有利か?と損得勘定、下心で決めても続かないものです。

自分が好きだなあ、素敵だなぁと思う人を見つけてください。そして発音練習ではなく物まね、憑依だと思って幼子のようにまねっこをお楽しみください。

ずっと1人と添い遂げなければいけないわけではありません。好きな人が見つかったらとっかえひっかえ何人もお楽しみください。

そしたらきっといつか、あなたの英語はあなたが大好きな尊敬する人たちの声を集めたアルバムになることでしょう。大好きな人たちへのあなたの想いが声にのって聴く人に届くでしょう。さぁ今日から始めてみて下さいいね!

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AI翻訳がまだやらない、プロ翻訳者がやっていること

AI翻訳は日々進歩しています。ただ、今のところはハサミや包丁、楽器と一緒で使い方に工夫が必要です。

では、なぜひとつ前のブログでご紹介した「字幕をAI翻訳したからチェックだけお願い」の案件は難航したのでしょう。

実は、問題はAIの翻訳作業ではなく、その前の段階にありました。

英語のナレーション原稿がいまいちだったのです。

He was a curious man who was able to follow his own curiosity in those days.

これじゃ「馬から落馬して落っこちた」みたいじゃありませんか。

多くの日本人が、外国語、ことに英語を見るとフリーズして、そこにクセや弱みがあるとは思わなくなるようですが、あるんです。

日本語ができる日本人の誰もが日本語のプロではないように、英語が書ける人たちがみな、英語のプロというわけではないのです。

英語で学んだ人たちも、今日では大方、ロジカルなアカデミックライティングだ、スキミングやスキャニング読みだ、戦術モードです。

文体や語彙選び、響きの調整は「典雅で高尚、でも役に立たない趣味」とみなされがちです。

でも、そこなんですよ。「多くの人が知らない」けれど「人の心にすんなり届くために欠かせないコツ」は。

black woman with pen taking notes in planner
Photo by SHVETS production on Pexels.com

私が翻訳するときは、まずもとの英語を推敲します。もちろん必要に応じて著者に確認をとります。「まかせる!」と言われる場合がほとんどですが。

そういえば、国際基督教大学の恩師、斎藤和明先生も、アイヴァン・モリスの「The Nobility of Failures 高貴なる敗北」を訳しながら、史実、人物関係を調べ直し、50箇所も訂正していらっしゃいました。

翻訳者は校閲者、編集者でもあります。原文の傷やへこみを直してから日本語にするのは、筆者への敬意あってこそ。弱点ごと日本語で複製するほうがよほど失礼です。

さて、英語のまま読むのが苦手だからAI翻訳を使っているのに、英語の推敲や校閲なんてとても…と思われる方もあるでしょう。

ご自分の専門分野だったら、校閲はご自分の脳内でおやりになれば、まあ、よろしいかと。

推敲ですが、今は便利な推敲アプリがあります。Pro Writing AidやGrammarlyが知られています。アカウントを持っている大学では、これを通していない学生のエッセイは受け取らないところもあるくらいです。

推敲アプリだのみになると、前述の「戦術」に適うつまらない文になる傾向はあります。でも、少なくとも「馬から落馬して落っこち」たりはしません。

そのうち、翻訳アプリと推敲アプリが統合されるかもしれませんね。

私も Pro Writing Aid の生涯アカウントを持っています。申し込み確認のメールに期限が2059年とあったのには笑ってしまいました。そのころは遊んでいたいですが、もっと長生きする予定です。

次回はAI翻訳が向く分野、向かない分野をご紹介しましょう。

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「AI翻訳をプロ翻訳者にチェックさせる」がうまくいかないのは?①

こんにちは!通訳藝術道場の冠木友紀子です。
すっかり春めいてきましたね。Spring is just around the corner.

このごろはAI翻訳も相当進歩しています。

でもまだなんでもお任せというわけにはいかないようです。先日、私もえええ!と思うことが2つありました。

そのうちの1つを今日はご紹介します。

「AI翻訳した字幕をチェックしてほしい」と長年のご縁の方々からご連絡いただきました。

あのAIでこの分野ならけっこうイケるのでは!チェックだけなら格安でお受けできるはず…と拝見したら…

心に訴えるはずのところはお勉強の英文和訳調。情報の順番が前後して頭が悲鳴をあげます。科学的な内容を論理的に順序良く伝えるべきところもこんがらがって…。

こうなると、「もとの英語音声」と「AI翻訳の日本語」の両方を気にしなければ…。

ふだんはもとの英語だけ聴いて翻訳するのですから、仕事は「倍」です。

city road man people
Photo by zhang kaiyv on Pexels.com

結局、はじめから翻訳することになりました。

どうしてこんなことになったのかは次稿にてお知らせします。

AI翻訳のチェックを翻訳者に頼んだら、意外とお金がかかったとご不満の皆さま、AI翻訳をする前に、翻訳者にご相談ください。プロならば、AIと人間の按配を忌憚なく見積もりするはずです。

誰もが限られた時間をよく生かすことができますように。

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「日常英会話くらいできるようになりたい」がダメな理由

エキスパート通訳トレーナーの冠木友紀子です。

「日常英会話くらいできるようになりたい。」そんな声を聞くたび、あーあ、と思います。それ、考え直した方がいいです。

理由は2つ。

1つめ。なんだ、その「ーくらい」っていうのは。学ぶ対象を見くびるとろくなことになりません。英語は音響・生理的にも日本語から遠い。甘く見るとみっともないことになります。

まあ、イギリス人がこぞって「日本語くらい話せなくっちゃ」と言い出したらちょっと感心しますが。

2つめ。日常なんてありません。毎日が新鮮で多様。

本当に共通する日常なんてわずか。そこはポケトークに任せればよろしい。あなたの日常は、他人にとってはシュールな非日常。他人の日常はあなたには非常識な非日常。ましてや、あなたとって「ちょっと変わったできごと」は他人にはもはや事件。

sliced boiled egg on white plate
Photo by Mona Sabha Cabrera on Pexels.com

たとえば…大学生からきいた「日常の小さなできごと」は…
「バイト先でお盆に飲み物を沢山のせてお客さんのところまで運んだはいいが、お客さんのひざ(lap)にぶちまけてしまった。店長が謝ってくれて、お客さんは怒らなかったけれど…」

(ええー!怒らなかった?お客さんは何をはいて帰ったの???)

自宅からオンラインの学生は…
「今、うちがひどい匂い。お昼に電子レンジでゆで卵を作ったらとてもおいしくて、もうひとつ作ろうとしたのだけれど、アルミを巻くのを忘れたら大爆発。硫黄温泉の匂いです。17時に母が帰ってくる前に掃除しないと。」

(電子レンジにアルミでゆでたまご????)

これ、すべて大学の授業のウォーミングアップできいたお話です。毎週毎週、こんなとんでもない日常を互いに聴いては日英通訳します。

衝撃のあまり通訳がなかなか始まらないことも…。

学生の通訳のあと、すべて私がモデル通訳します。それをみんな自主的にその場でリピーティング。メモ、録音してお土産にします。みんな真剣です。リアルな話題ですから。もう、ウォーミングアップだけでどんどん伸びるんです。90分こればっかりやっていたいくらいです。来年はそうしようかな?

さて、これのいったいどこが平穏な日常?!でも、平和そのものです。めいめいに変なことやれてますから。

私も帰路は衝撃的なお話を反芻しながら思い出し笑いしてます。たぶん、学生も授業の内容よりこっちのほうを覚えていることでしょう!

オトナの通訳道場では、ここまでぶっとんだ日常はまれです。でも、同じようにお互い通訳、すべてモデル通訳しています。

他人の日常にびっくりする、集中して通訳する。誰かにいいふらかしちゃう。これ、ボケ防止になりますよ、きっと。

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なぜコミュニケーション・スキル講座の日本語は不自然なのか?

こんにちは!エキスパート通訳トレーナーにしてシモヤケエキスパートの冠木友紀子です。

先日なんとなくTVをつけてみたら、コミュニケーションを円滑にする言葉づかいなるお勉強の最中でした。

「専門家」によると…「君、具合悪いよ。」と相手のことを決めつける(You messageあなたメッセージ)は相手の反感を煽りがちなので、自分の視点で語るように、とアドバイス。ごもっともです。

でも…「ねえ、私にはあなたが疲れているように見えるんだけど。」

この日本語にゲストがぴしゃり。「そんなこと言うかしら。」

ありゃまあ。

two women sitting on chairs beside window
Photo by Christina Morillo on Pexels.com

今日あるコミュニケーション技法の多くは英語圏由来のものです。

違和感を覚える人たちの中には「アメリカ人ならそういうかもしれないけど、日本じゃ変でしょ」と言う人もいます。文化の違いとし

確かにそういう傾向もあるでしょう!!

でも、私はもっと基本的なところに改善の余地があると思っています。

上の変な日本語、引っかかっているのは、こうでしょう?
1「わたし」「あなた」人称代名詞のうるささ
2「見えるんだ」の洋画字幕、吹替ぽい不自然さ。

もとの英語は大方こんな感じでは?
Hey, It seems to me that you are tired.あるいはYou seem tired to me.

だとしたら、書き言葉の英文和訳思い込みの残念な翻訳が足を引っ張っているだけです。

こうすると、楽で自然になりますよ。
★日本語では言わずもがなの代名詞は出さない。
★そもそも英日で品詞の概念が違います。英語の動詞を日本語の動詞に訳さなくてよし!

自然な日本語にするほど、日本語は「I」「You」のどちらかではないほうがしっくりきませんか?YouとIの間にそっと置くItはじまりがなじむのではないでしょうか。そして仮定、疑問や逆接もやわらかく使う。

「ねえ、なんか疲れてるかな、って思ったんだけど。」

まあ、それぞれの口になじむ日本語は、それぞれで探すものかもしれません。ただ、出だしでつまづくことが少しでも減れば、と願う次第です。

通訳・翻訳を目指す方は、英語ばかりでなく同等に日本語も精進してくださいね!

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冬季オリンピック、スピードスケートの「パシュート」って何語じゃ?

こんにちは。エキスパート通訳トレーナーの冠木友紀子です。
冬季北京オリンピック、楽しんでいますか?

どうも冬の競技は、危なくて見ていられないのと、何度見てもわけがわからないのが多いような気がするのは私だけでしょうか。

わけがわからないといえばカーリングとスピードスケートのパシュート。

パシュートって何?フランス語とドイツ語のミックスみたいだけれど…ははあ、中期フランス語、pour suite (追跡)を元にできた英語のpursuit でした。

んん? pursuitは「ぱしゅーと」とは発音しないけど…

みなさん、「ぱしゅーと」じゃ99.9%通じません。ここに発音記号を書いても大して面白くもないでしょうから、平仮名でいきます。

gray olympics concrete block
Photo by Anthony on Pexels.com

「ぷすぅー」のほうがよっぽど通じます。

いいですね、パシュートは英語で「ぷすぅ ー」ですよ。(なんのこっちゃ)

物知りの皆さんは、きっと「pursueの名詞形ですよね!」とじりじりしておいでのことでしょう。

ご明察のとおりです。pursueはラテン語のprosequi「あとについていく」に通じます。sequence, consequenceとも親戚(?)です。

さて、ここでもう一歩細かく調べましょう。

動詞pursueの名詞形がpursuitになったと言うけれど、それが「どこで」か考えましたか?イギリスでしょうか?

すでに答えは書いてあるようなものですが、ブー、違います。

ヨーロッパの西北の最果て、イングランドにpursueが達してから名詞化したとしたら、途中の皆さん(主にフランスさん)はいったい何をぼうっとしていたのでしょう。

ラテン語ははるかイタリア(ローマ帝国)を旅立ちイギリスに到達する前に、フランスですでに名詞に派生しているのです。イギリスは動詞、名詞、それぞれ「できあい」のものをフランスから受け入れているのです。

これってまるで「おかずと汁物」を届けてくれるお弁当宅配のようではありませんか。

福祉のお弁当宅配は1つの町を3つくらいの業者さんが分担していることもあります。だから、日替わりで和食、洋食、中華、汁物もいろいろ…と楽しめます。

さて、フランス語弁当いろんな時代に、あちこちからイギリスへ配達…イギリスは喜んだかもしれませんね。でも、日本人には…そう、派生語の語尾がいろいろありすぎるという不満の原因となります。

そりゃ、なんでもnessをつければいいなら楽だとは思いますよ。でもあまりにも変化に欠けるのはやりがいがなくて、不自由で、飽きますよ。毎日日の丸弁当のみだったらどうでしょう?

それじゃ飽きちゃう、という人はつべこべ言わず繰り返して身に着けることです。どの言語もあなたが生まれるよりはるか昔からあったんですから、あなたの都合でできているわけじゃありません。あなたの都合を超えたものを体得することで、あなたは成熟するんです。

外国語のこまやかさも繰り返して慣れれば愛着がわくもの。そして日本語のこまやかさに改めて興味がわくもの。

通訳を目指す方は、英語と同等に日本語も精進してくださいね!

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讃美歌「ああベツレヘムよ」にビックリ!

こんにちは。通訳藝術道場の冠木友紀子です。

もうすぐクリスマス。

いつも不思議に思うのは、クリスマスの讃美歌は、ほかの讃美歌よりずっと「入ってくる」「しみこんでくる」こと。それだけ作詩、作曲者も工夫を凝らしたのでしょうね。

讃美歌といえば、古文のような美しい日本語も魅力。

でもこのごろ気になるんです。

初めての日本語訳讃美歌がどれほど仏教や神道から借り物をしているのか。新しい訳の讃美歌に、ポジティブ志向、反知性主義、二項対立の色がしのびこんでいるのか。

こちらも初めて聞いてから40年余り。うっとり歌っておりました…。

ああベツレヘムよ	
などかひとり
星のみ匂いて	
ふかく眠る
知らずや、今宵	
くらき空に
とこよのひかりの	
照りわたるを
(讃美歌115番)

ん?

もとの英語歌詞と比べると、思いがけないところが違うのです。

O Little Town of Bethlehem

O little town of Bethlehem 
how still we see thee lie!
Above thy deep and dreamless sleep 
The silent stars go by.
Yet in thy dark streets shineth
The everlasting Light;
The hopes and fears of all the years
Are met in thee tonight.

(Lyrics:Philips Brooks Tune:Lewis H. Redner 1868) 

英語歌詞は、1868年、アメリカの教会学校の子どもたちのために書かれました。その内容は決して子どもだましではありません。

夜は身じろぎもしないような小さな町、ベツレヘム。
その上を天の星々は静かに過ぎゆきます。

ところが、暗い路地に今宵輝き始めた星は、地上を離れません。
この星のもとに人々が集うと、心のうちののぞみとおそれが和解する、というのです。このまぶしい星の光に、のぞみとおそれを分け隔てる心の内の壁(分別の愚)も消え去るようです。

ところが、日本語の美しい古い訳は、輝く星は天に現れたことになっています。

そして、英日の音声の特質上、「のぞみとおそれ」のくだりは入っていません。

さあ、新しい訳になると…

ああベツレヘムよ、
小さな町まち。
静かな夜空に 
またたく星。
恐に満ちた 
闇のなかに
希望の光は 
今日かがやく。
(讃美歌21より)

光が闇をやっつけた風ではありませんか?

確かに、闇は光に勝たない、というくだりが新約聖書にもありますが、やや単純な二項対立はどうもおだやかではありません。

それに、もとの英語歌詞のニュアンスとだいぶ違うのです。

訳詞ではなく翻案なのかもしれません。

いずれにせよ、あるひとつのメロディーとともに歩んだことばの経過をたどると、思わぬ発見があるものです。

なんだか、気持ちよく歌っている場合ではなくなってしまいます…。

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千葉の〇〇学園、面白すぎます。

こんにちは。通訳藝術道場の冠木友紀子です。

千葉の○○学園…この学校名をきいたら、皆さん「え、あのすごく勉強する学校でしょ」と思うことでしょう。

まあ、それもそうなんですが、それだけでもないんです。

学外からいろんな大人を招いて、土曜講演会やゼミを開いたり、生徒が学外で発表して受賞したり。とにかく風通しがいいんです。

私も某「出前授業チーム」に招いていただいたのがきっかけで、この学校にご縁ができました。今は思いっきりわがままに楽しんでいます(経緯は割愛)。

夏の3日間朝から晩までのワークショップで1学期分ゼミを担当したとみなしてくださるのですから、自由です。ありがたい。(毎週90分のゼミに横浜から千葉に通うのは大変すぎます。)

今年も3日間、あっという間に過ぎました。そして、高校生の素晴らしいストーリーテリングに感服しました。

何をやっていたかというと…英語で話芸です。

正直、初日は焦りました。

だって、大喜利なんか朝飯前。立川志の輔さんの有名な小噺「ハイジャック」のオチもみんな見事に当てちゃうし…。

(ハイジャック概略:「おい、この飛行機はハイジャックした。おとなしく言うことを聴け。メキシコへ行け。」「バカか」「なんだと!メキシコへ行け」「〇〇〇〇」←ここを創作)

2日分のお話の素材が1日で尽きてしまう!小噺を増やしてもなんだか退屈だし、落語は一朝一夕では嘘くさいし…

ここで生徒諸君に相談すると、物語をアレンジして語ってみたい、という声が。

そこで「ロバを売りに行く親子」を提案しました。Doorways to the Soulに収録されている英語版です。

selective focus photography of gray donkey eating grass
Photo by Felix Mittermeier on Pexels.com

先刻ご承知かもしれませんが…ロバを売りたい親子はいまいち自信がなく、市場に着くまでにいろいろな人々の無責任な助言に翻弄され、ロバには逃げられるというお話です。

まず私が語り、少しずつ生徒諸君に語りに参加してもらい、だいたい渡せたところで今度は登場人物気分グラフ。少人数グループで気分グラフを互いに見せ合うことで、知らないうちに物語を語ることになります。

その後、インタビューもしました。登場人物(ロバ含む)役とマスコミ役にわかれてロールプレイです。ロバ役の男子生徒君、最高でした。少しの単語でも使い方次第で大爆笑になるんです!いい味出してました。

さて、ここで新たなミッション。「ハッピーエンドにお話を変える。」

どのアイデアも素晴らしかったのですが、これには皆一瞬静まりかえりました。

簡単に日本語で書きますと…

「市場に着くと、ロバコレクターのお金持ちから引き合いがありました。けれど突然、ロバが涙を流し悲しい鳴き声をあげはじめたのです。広場の隅のおんぼろ動物園に、赤ん坊のころ別れたお父さんロバを見つけたからです。ひとりぼっちになったお父さんはいっそう老けて見えました。農夫はロバが親子水入らずで暮らせるよう動物園にロバを寄付しようと決意します。周りの人たちは金持ちにロバを売れ、金持ちが寄付すればいい、と忠告します。今度ばかりは農夫も毅然と答えました。「寄付したいのは私の意志だ。売ってお金をもらったら、あとは買い主の思うままだ。お金をもらうより、いまは意志を実行したい。」人々は恥じ入り、感激しました。めいめい農夫に贈りものを持ち寄りました。おかげで農夫の奥さんも喜んだとさ。」

これを思いついた高校生は、2日間でこの部分だけでなく冒頭から全部英語で覚え、みんなの前で語ったのです。みんなも英語のうまいへた、正しい、間違っている、というものさしから自由になって、心できいていました。

心で生み出すものは心にしみいる。心のスイッチが入ると、頭だけで覚えられる限界の何倍ものことばが、あっというまに身につく。

そんなことを、みんな身をもって示してくれました。

この学校には9月初めに立川志の春さんが2回目のご登場です。もちろん行きますとも。

伝説の検定外教科書プログレス旧版で通訳養成の準備…のはずが、「育ちのよい英語」を教えられる先生が育っています。→英語の土台徹底リノベ講座

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【英詩講座レポート⑨】史上初の「いいね」 The Genesis (創世記)1:1-5

通訳藝術道場の冠木友紀子です。

シュタイナー学校の先生のための英詩講座も第9回となりました。たった9回ですが、なぜかもう100回くらいのような気がします。みずからの問いを手掛かりにたったひとつの詩に2時間向き合う時間はとても密度が濃いのです。

これまでの詩は、一見『めだかの学校』みたいにあどけないものばかりでした。ところが、子どもの心にすっと届くよう選び抜かれた言葉たちは、かえって奥深い綾を織りなしていたのですねえ。

それが今回は「一見『めだかの学校』」どころじゃございません。

「旧約聖書 創世記 1章1-5節」

うう…。

講座でも話題になりました。「なぜこれが英詩として小学4年生に?」

この問いをもとにかいつまんでご報告します。

この英語、いつごろのものと感じますか?

THE CREATION
GENESIS 1:1-5
In the beginning God created the heaven and earth.
And the earth was without form, and void;
and darkness was upon the face of the deep.
And the Spirit of God moved upon the face of the waters.
And God said, Let there be light: and there was light,
And God saw the light, that it was good:
and God divided the light from the darkness.
And God called the light Day,
and the darkness he called Night.
And the evening and the morning were the first day

1900年ごろ?1850年ごろ?それとも1800年?

実は、1611年に出版されたものです。江戸初期の日本語よりずっと現代に近く感じませんか?

これは欽定訳聖書。欽の字は金欠と書くのに王様のことなのが不思議ですが、ジェームズ1世(スコットランドではジェームズ6世)の命により進められ、初めて全巻翻訳が完成した英訳聖書です。

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いまでこそどこの本屋さんでも聖書を売っています。キリスト教主義学校では新入生に入学祝いとして聖書を贈り、毎朝の礼拝でほんの少しずつ精読、講話を聴きます。(このスタイルが私の詩の読みに大いに影響しています。)

でも、昔、カトリックの世界では聖書は専門職のものだったのです。一般ピーポーが読むと間違うから無理、ダメとされていたのです。

よく凝りに凝ったキンキラキンの写本が博物館に展示されているでしょう?あれが本屋さんに並んでいるわけがありません。修道院や教会の外に出ることのない1点ものです。

KellsFol032vChristEnthroned.jpg

なので、ルターが「聖書と信仰のみ」と言い出したのは大変なことでした。

イギリスでもウィクリフ(1320頃―1384)、ティンダル(1494(5)-1536)が、ギリシャ語、ヘブライ語の聖書原典を英訳しようとつとめました。(この前にもすごい人たちがいますが、長くなるので割愛します。)

ところが、ウィクリフはカトリックに死後異端と決めつけられ、遺体を掘り起こされ著書と共に火あぶりにされるという何とも恐ろしいことに。

ティンダルは離婚再婚しまくりのヘンリー8世と対立し、国外逃避行の最中ベルギーでこれまた火あぶりにされます。

気の毒な最期を迎えたティンダルですが、子どもにもすっと伝わるような翻訳を心がけたとされ、のちの欽定訳の土台になりました。

ウィクリフやティンダルにしてみれば、王様が「俺が責任取るからとにかくやれ」と命じ、一般ピーポーも読める英語聖書が生まれるなんて、夢のような話でしょう。

さて、聖書は何のためにあるのでしょう?

民族の歴史を記し…預言者の声を残し…とさまざまですが、なによりひとの心を動かし、信仰を抱かせることでしょう。

ならば、心に響くような工夫を凝らさないはずがありません。

おのずと、始めから終わりまで工夫を凝らした一大文学作品となったのです。散文の部分まで、ありきたりの論文やジャーナリズムのような散文とは次元が違います。

だから、英詩としてWaldorf Book of Poetryに収録されているのでしょう。

英語と縁のある日本の皆さんも、信仰は別として、英語聖書をひもとくことを強くおすすめします。

それに、ちょっと面白いこともあります。

今回の部分には「神の霊が水のおもてを被って」とあります。でも、ちょっと先まで読んでみると「大地は乾いていた。でも地下から水が湧いた」のようなことが書いてあります。

さらに、「神は人を男と女に創造された」と書いてあるのに、その後でアダムのあばらからエバが造られる話が出てきます。

ん?おーい、編集者!

これ、別々の資料のつなぎ合わせという説が有力です。前者はP(Priest祭司)資料と呼ばれ、神こそ創り主、と念押しします。後者はJ(ヤハウィスト)資料と呼ばれ、あまり神話的ではなく、社会的、歴史的な記述が目につきます。

昔はモーセが旧約聖書最初の5巻、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記はひとりで書いたということになっていましたが、本当ならちょっとアウトプット過剰では?

さて、今回の部分に戻りますと…

①プレグナントな瞬間

さて、P資料部分の欽定訳、音読してみると、心拍のように心地よいリズムが感じられます。まるで胎児の身体に血が巡り、心臓が脈を打ち始めるときのようです。

赤ちゃんつながりで思い出されるのは高橋巌先生著の「デュオニソスの美学」です。この本のなかで高橋先生は繰り返し「プレグナントな瞬間」と書かれます。プレグナントは語源的には「誕生gnantに先立つpre」という意味です。誕生の一瞬前に生まれ来るものを想い、胸高鳴るときです。

4.5年生ともなれば、絵を描くにも、文章を書くにも、この胸の高鳴りを知るのではないでしょうか。まだ世と一体の幼子は知らない緊張と興奮を。

In the beginning…と声に出す前に、このプレグナントな一瞬を想いたいものです。

②光にまかせ?

日本語では「光あれ」の部分、なんだか光が「親分、お呼びですかい」と飛んでくるよう…と妄想するのは私だけでしょうか。

ここ、英語ではLet there be light.です。Let S VはSがそうしたいと願うままにさせる、というニュアンスです。光自身が「世に在りたい」と願い、神様は「いいよ」と認めたということでしょうか。And God sawa the light, that it was good.そして神は「いいね」した。史上初の「いいね」です。このあとずっと「いいよ」「いいね」が続きます。

今日の世界を神様が眺めたら「いいね」できる?なんてことを問う子どももいるかもしれません。

③エロヒム?

しばしば日本のひとたちが一神教のことを単純化し過ぎているのが気になります。これについては別稿にて。

「私以外を神としてはならない」なんて、「私」以外に誰もいなかったら言うもんですか。

さて、Waldorf Book of Poetryでは欽定訳の左隣にヘブライ語のアルファベット音写があります。フリガナ(?)どおり音読すると、真言のような迫力がありますがさっぱり分かりません。一言を除いては。エロヒムです。

(シュタイナーによるエロヒム説も講座では触れましたが、ここでは「語」に注目します。)

英語では神はずっとGodですが、ヘブライ語ではElohimと書かれています。
この語はアッラーをはじめ、中近東のさまざまな神の名と語源を共有しています。ときに単数扱いされたり、複数扱いされたり、はたまた動詞の形も単複揺れがあったり…ととても複雑です。

とかく私たちは海外というと欧米ばかり想像したり、その源をギリシャ・ローマまでしか認識しなかったりします。

まだその奥があるのです。

そして今週土曜、7月17日はなんと詩篇23篇「主はわが羊飼い」です。
お申し込みはこちらからどうぞ。

シュタイナー学校の先生のための英詩講座 第10回 The 23rd Psalm

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【英詩講座レポート⑧】人間はそんなに偉いか?-“Unstooping” by Walter De La Mare

第1回でとりあげたウォルター・デ・ラ・メア(1873-1956)。
Some Oneでは人間の世界の向こうに広がる、自然の世界の不思議を感じさせてくれましたー夜明け前の森の小屋の扉を叩くノックの音…扉を開けると誰もいなくて、向こうの森からはフクロウの声…

さて、今回は…?

え?なんだか人間中心、動物に優位?

え、まさかデ・ラ・メアが、そんな…

Unstooping 
                       Walter De La Mare 
 
Low on his fours the Lion 
Treads with the surly Bear;
But Men straight upward from the dust
Walk with their heads in air;
The free sweet winds of heaven,
The sunlight from on high
Beat on their clear bright cheeks and brows
As they go striding by;
The doors of all their houses
They arch so they may go,
Uplifted o’er the four-foot beasts,
Unstooping, to and fro.

1,2行目のLion, Bearは大文字でしかもtheがついています。
初登場でtheがついていると、ライオンのなかのライオン、ライオンたるもの、というふうに本質を体現する代表を示します。「ライオンは百獣の王である」のライオンはthe Lion ですが、「オスのライオンは子育ても狩りもせず昼寝ばかりしている」はthe ではなく、そんじょそこらのa lionです。

さて、のしのしと大地をふみしめる立派なザ・ライオン(ビール?)とザ・熊と対比される人間は…ただのMen。ザ・人間ではなくただの複数形の「人々」。3行目のdust (塵)からまっすぐ立ち上がる、のくだりは、土くれから作られたアダムが神様の息吹に魂をもって人として生き始めた、アダムの創造を想い起こします。

アダムの創造は1回きりではないのでしょう。
ひとりひとりがアダムであり、「人々」はそれぞれ日々創造され続けているのです。

そのことが、第2連の天の風と光という精神の糧を頬に受け続け、晴れやかな面差しでいる、あたりに現れているのではないでしょうか。

strideも大股でさっそうと歩いていて爽快です。

第3連、玄関扉がアーチしているのは直立姿勢を保つため、と聞いた子どもは、アーチ扉を見るたびに思わず姿勢を整えるでしょうね。

close up photography of brown lion
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直立、とは書きましたが、デ・ら・メアはuprightという言葉は使っていません。upliftedと過去分詞です、受け身です。人がまっすぐ立つのは自分の気合頼みではなく、天から引き上げられてのことなのだ、と思えます。

そして最終行はunstoopingとタイトルにもなっている語で始まります。

unstoopで辞書を引いてみてください。たいていの辞書にはないでしょう?。OEDでも用例は4,5文しか載っていません。そんな言葉、第一印象はきっと「造語」です。しかも否定の接頭辞unがついています。

人間は肯定文を想像し、それをもとに否定文を作ります。いきなり否定文は作れません。

Unstoopingの場合、まずstoop(身をかがめる)が目に浮かびます。これは受け身ではなく、自動詞の現在分詞です。自分でしちゃうんですね。

となると…どうも「人間よ、お前は動物より優位だ。世に君臨せよ」とはだいぶニュアンスが違います。そもそも「人間の皆さん」がそんなつもりになったらSDGsどころではありません。

実は、この詩に描かれている人間はそんな強者ではないように思うのです。

弱い人間が絶望にうなだれ、孤立するのは簡単。

だからこそ、他者と共に、自らのみをより頼むのではなく、天に任せ、望みをもって思うように歩み続けよ、と励ましているのではないでしょうか。

この詩が何年に書かれたのかは不明です。

ただ、1910年ごろから英仏露と独・オスマン・ハンガリーの関係が悪化し、戦争の暗雲が近づきます。

人間がみずからの内なる獣性に屈服し、互いに戦い続ける時代の到来です。
立派なライオン、立派な熊が呆れるようなことを人間が性懲りもなく続けた時代です。

そんな時代に飲み込まれた普通の人々を、この詩は激励しているように思います。

新コロ騒動をデ・ラ・メアだったらどう描くことでしょう。

シュタイナー学校の先生のための英詩講座、明後日は何と旧約聖書、創世記の出だしです。
英語表現を深く理解するには、キリスト教の知識が不可欠です。一方通行講義はしません(できません)。ご参加の皆さんの疑問、発想を中心に一緒に旅をします。ぜひご参加ください。

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