おや?と思ったのは、先日退院したジョンソン首相がStay home. Save lives.と言ったとき。イギリスではstay AT homeが多く、イギリス政府のサイトもオクスフォード系の辞典の例文も私が見た限りのものはstay at homeです。
イギリス政府の公式サイトはStay AT Home
ただ、イギリスの方が古くてアメリカが後で省略したかどうかはOxford English Dictionaryという20巻を超える、家に収まらない辞書で確かめねばなりません。アメリカに古い形が残っていることも多いのです。新参者ほど正統、保守のふりをしたがることがありますからねえ。ラーメンや餃子ののれん分け屋号にも見かけます。
音を調える
イギリス政府のサイトは見出しで「Stay at home」と使っています。おや?save livesがない。そう、save livesと調子を合わせるためにat を省略しているのでしょう。後ろにWork with love.かなんかあったら、Stay AT homeのほうが調子がいい感じがします。単語も自分だけの正しさを主張するのではなく、フレーズ全体としてのバランス、調和を大事にするんですね。文字のない言語はあっても、音声のない言語はありません。言語は人間が声で奏でる歌ですから。
それにしてもこういう場合、どの前置詞も犠牲になるんでしょうか?そんなことはありません。stay in bedのinを省略したらすごく変です。布団にくるまっているイメージが吹っ飛びます。おそらく、犠牲になる前置詞は抽象度が高く、具体性が低いもの、イメージがわきにくいものでしょう。まさにatがそうです。atのあとにくる名詞は点(0次元)と捉えられますから。具体的なモノではなく、その性質や機能を表します。たとえばat schoolといえば学校に行っている、という居場所ではなく学生だ(家にいてもいい)という身分を表します。
One day a fox saw some grapes. They were hanging from a tree and so they were very high above the ground. It was a hot day and the fox was hungry and thirsty. ‘Oh, look at those beautiful grapes,’ he said and jumped up. But the grapes were too high. He couldn’t reach them. He jumped up again and again. But he couldn’t reach the grapes. Finally he was very hot and tired. ‘Oh, I didn’t want those grapes,’ he said. ‘Maybe they were sour anyway.’