芸能人は政治的発言をすべきでないと思うなら…「この人を見よ」Last Week Tonight with John Oliver

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。このところ字幕づくりにかかりっきりでした。

さて、近頃、タレントさんのなかにも国会や憲法に詳しい人たちが出てきました。以前は芸能人が政治的発言をしようものなら、「黙ってろ」のような反応があったものです。大きな影響力を政治的に使うな、という意見もありました。

そんな意見の持ち主もぶっとぶすごい人を通訳道場生のE子さんが見つけてきてくれました。

こちら、ジョン・オリバーさん。アメリカ在住のイギリス人コメディアン&役者です。えくぼがなんともかわいいけれど、この方ただものじゃありません。HBOという有料テレビでLast Week Tonight with John Oliver という番組をもち、これが大人気で今年もエミー賞に選ばれました。

その内容ときたら、アメリカ大統領選、ウィグル自治区への中国政府の仕打ち、新型コロナウィルス騒動に子どもへのワクチン、と時事問題に堂々切りこんでいます。特にトランプ大統領への面白おかしく辛辣なコメントにはトランプ大統領自身ツイッターでけんかをふっかけるほど。オリバーさんは米国籍も持っているようですが、それにしてもここまでコテンパンに言うとは。

それでも多くの人がゲラゲラ大笑いしてこの番組を楽しんでいます。

たとえば想定外のギャップ。
笑いは究極の緊張が弛緩するときに生まれる、といいますが、まさにそうなのでしょう。。ギャップの大きな2つの事柄を並べるお手並みは見事な「なぞかけ」のよう。

たとえば「トランプ大統領は背中に現れた悪性のほくろのよう。去年までは無害だったけれど知らないうちにでかくなって今年はもう無視したらまずい」など。

そして可笑しいほど格調高いイギリス英語。さすがケンブリッジ大学のご卒業。知性に支えられたお笑いはお手の物。このアクセントでfuckingを連発されると脱力してしまいます。

いまのところ日本は微笑ましいゆるキャラで取り上げられていますが(でも、最後のほうでちらりと今年の大統領選をくさしていますが)、さて、どうなりますやら。

もし日本で、日本人女性と結婚した北京大学卒の中国人の男性が…あれ?何語で…?

ジョン・オリバーさんはイギリスとアメリカの間のニッチに他にまねのできない立ち位置を確立しているのですね。

通訳道場の朝稽古では、この方を同時通訳するという変な自主練が通訳道場生の間で流行っていて…おおいに結構。

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通訳準備、専門用語と同じくらい大切なのは

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

最近、おや?と思うことがありました。

私が主催する通訳道場の朝稽古でのことです。ある道場生が自分の専門分野の最新動向についてのプレゼン動画を稽古に提供してくれました。ほかの参加者は私を含め門外漢です。

この方は懇切丁寧に説明しようとしながら、「イメージわきます…?」と不安そう。

「やっぱり難しいです」という答えを期待されていたのかもしれませんが…

私は「イメージわきまくりです。」

だって、その動向は世の中のトレンドの一部。他分野の動向と共鳴しないはずがない。孤立していたら滅ぶはず。日常生活にも容易に比喩が見つかります。

「専門家でないとわからないのでは」と思い込むと、自分の言葉が干上がります。

自分の分野で起きていることが、よその専門分野でも起きていないか、という目できょろきょろすれば、自分たちのことを他者の言葉で語ることもできるでしょう。それは豊かなことだと思います。

そんなこと言われたって具体的にどうすれば?

まずはユヴァル・ノア・ハラリさんの「サピエンス全史」やデービッド・クリスチアンさんの「ビッグ・ヒストリー・プロジェクト」などで「人類史」の視点に慣れることです。

通訳の準備といえば「専門用語」を想いますが…それは点に過ぎません。

点と点をつなぐ思考の線、ビジョンの面を捉え、専門家の頭の中にある景色がだいたい見えるようになること。その専門家の頭の中の景色を「人類史」を背景に捉えること。人類史をふだんから気にすること。

通訳の適性としては、こうした歴史や社会の動向への関心ほうが海外生活の有無や外国語運用力よりよほど大事です。

英語ができるので通訳を頼まれてしまう方たちのために小冊子作りました。こちらからどうぞ。

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洋楽歌詞、本当はこう歌ってるのでは?―Deacon Blues by Steely Dan

こんにちは。持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

便利な世の中になりました。でも何でも検索できると思ったら大間違い。自分の知らないことは検索できない。知らない音楽は聴けない。だから人に教わるのがありがたい。

訳詞に満足できない、とM姉さんがSteely Danを教えてくれました。以来すっかり気に入っています。今日はDeacon Bluesをとりあげます。

それにしても、かっこいい。洗練されてる。なによりあの半音が心地よい。MUと呼ばれるコード(CソドミをCmuソレミにずらす。ドとミのあわいが際立つ)は12世紀の聖歌からひとの耳になじんだものだそうで。

いろいろな楽器が繊細な音のレイヤー重ねていくようで、ヴェールペインティング(層技法絵画)を想います。すべての楽器が輝いているのに、どれも野暮な主役を主張しない。さらりと主役を交代していく。

Steely Danに参加したプレーヤーが言っていました。「考え尽くす、試し尽くす、完璧にする。さらに完璧の先を行く。それが自然なんだ」と。

フェイゲンはこの曲をベッカーと振り返って、「なんか俺、ジェリー・ルイスみたいな声出している」と言っています。ジェリー・ルイスといえば寄り目のアクションを志村けんが取り入れたとか。我らが志村けん、同じ年ごろのSteely Danを聴いていたのでしょうか…

さて、少しずつご一緒に。原詩の右端の数字は韻の目印です。

 This is the day1
Of the expanding man2
That shape is my shade1
There where I used to stand2
It seems like only yesterday1
I gazed through the glass3
At ramblers4
Wild gamblers4
That's all in the past3

今日こそは
意識拡張者の日
その姿は俺の影だ
そこはかつて俺が立っていたところ
つい昨日のようだ
グラス越しにじっと見た
ごろつきどもを
荒くれ勝負師どもを
すべては過ぎたこと

2行目のthe expanding manはアルフレッド・べスターのSF小説「破壊(分解)された男」に登場する人物。思考と意識を自分を超えて拡張できる能力があるとか。地元の図書館が再開したら日本の文庫版を確認してきます。

3行目まではこれからナニヤラ大きなことが始まる気配ですが、4行目以降で語り手の現在はどうもイマイチ、ブイブイ言わせていたのは昔のことらしいと察せられます。なるほど、この曲はアメリカでは中年の危機にある人々に愛され続けているそうです。

man とstand、 glassと pastで韻と言えるの?と思われるかも知れません。綴りとしては不完全な韻です。でも歌をお聴きください。ばっちりです。歌は母音が長くなって強調されます。おまけにフェイゲンは行末の子音を柔らかく歌ってますから丁度いいです。

You call me a fool1
You say it's a crazy scheme2
This one's for real1?2?
I already bought the dream2
So useless to ask me why3
Throw a kiss and say goodbye3
I'll make it this time4
I'm ready to cross that fine line4

お前は俺をばかという
血迷った企みだという
これは本気だ
もうこの夢は買った
だから無駄だ、なぜと訊いても
投げキスしてさよならだ
今度はきっとやってやる
覚悟してる、あの一線を超えると

おや、Youが登場。誰なんでしょうね。フェイゲンはインタビューでこんな風に言っています。

“‘Deacon Blues’ is about as close to autobiography as our tunes get. We were both kids who grew up in the suburbs, we both felt fairly alienated. Like a lot of kids in the ’50s, we were looking for some kind of alternative culture, an escape from where we found ourselves.”
「Deacon Bluesって僕らの自伝みたいなもの。二人とも子どもの頃は郊外で育ったけど、すごく疎外感があった。50年代、多くの子どもたちと同じように僕らもなんらかのオルタナティブな文化を探してた。実際の居場所からの逃避としてね。」

どうも「夢から覚めろ。現実を見るんだ。それじゃ食えないぞ」てなことを言うドリーム・ブレイカーのようです。

さて、コーラス?サビの部分です。改行がうまく表示されるといいのですが…

I'll learn to work the saxophone1
I'll play just what I feel2
Drink Scotch whisky all night long1
And die behind the wheel2
They got a name for the winners in the world
I want a name when I lose 3
They call Alabama the Crimson Tide4
Call me Deacon Blues3

ものにするんだ、サックスを
ただ感じるままに吹き鳴らす
スコッチ夜通し飲み明かし
死ぬんだ、車運転しながら
世間は勝者に呼び名を与える
俺は名が欲しいのは負けの時
アラバマ大がクリムゾン・タイドなら
俺はディーコン・ブルースと呼んでくれ

ははあ、夢とはサックスを吹くことだったのですね。あら、音楽教室に?いえいえ、3行目から穏やかじゃありません。練習どころか飲んだくれて飲酒運転交通事故死。ちょっとちょっと!!

5,6行目。持つ者はますます名実ともに持つようになり、持たざる者は…の世の中なのですね。アメリカが代表する20世紀後半はことさらにそうなのでしょう。(当時斜陽だったイギリスは昔から勝負によらず王様にもじゃんじゃん渾名つけていますけど。エドワード懺悔王、獅子心王リチャード、ジョン失地王、ヘンリー8世は…)

クリムゾン・タイドとはアラバマ大学を代表するのさまざまなスポーツチームの称号。クリムゾン、深紅は大学のシンボルカラー。それが次々大波のように襲ってくるというイメージです。当時アメフトチームは常勝の強豪でした。

フェイゲンは敗者にこそ称号をと歌います。源義経、天草四郎、浅野内匠守、新選組、出番です!日本人の敗者を想う文化はThe Nobility of Failureに Ivan Morrisがまとめています。

さて、Deacon BluesをWake Forest Universityの弱小フットボールチーム、Demon Deaconsに由来するとする説もありますが、フェイゲン自身が否定しています。これはDeacon Jonesというフットボール選手に由来するそう。攻撃的でぶちゃむくれ(谷啓語)なプレースタイル、人柄で知られました。フェイゲンはDeaconが2音節なのでCrimsonと合うのもいいと思ったそうです。このDeaconを「助祭」としている訳を見かけました。残念、これは固有名詞でした。

My back to the wall 1
A victim of laughing chance 2
This is for me
The essence of true romance 2
Sharing the things we know and love 3
With those of my kind
Libations 4
Sensations 4

背水(壁?)の陣
声上げ笑うチャンスの生贄
これは俺のもの
本物の恋のエッセンス
分かちあうんだ 俺たちが知り、愛することを
俺と似たような連中と
献酒と
昂奮が
心によろめく

英語でBack to the wallを背水の陣、とすると耳には心地よくても景色が違うなあ、と悩ましいです。ここでちょっと目立つ言葉はvictimとlibation。後者は要するにお酒ですが、alcohol, drinkでは韻が台無し。それにlibationは生贄を捧げるときに大地に注いだりするお神酒、献げものとしてのお酒をさします。2行目のVictimと響き合うでしょう?それにしてもチャンスがlaughing…って。笑うにもいろいろあります。静かににっこりはsmile,歯をむき出してバカにしたように笑うのはgrin.laughは「声をあげて笑う」。生贄をほふりながら声を挙げて笑う…grinより却って怖いです。力が抜けそう…

I crawl like a viper 1
Through these suburban streets 2
Make love to these women
Languid and bittersweet 2
I'll rise when the sun goes down 3
Cover every game in town 3
A world of my own 4
I'll make it my home sweet home 4

俺はマムシのように這いまわる
町外れのこんな通りをうろうろと
そして愛を交わすのはこんな女たち
けだるく、ほろ苦い
俺は起き出す、日が沈む頃
町中のあらゆるゲームを把握する
俺自身のひとつの世界
楽しい我が家にしてみせる

サックスの練習はどうしたの?そもそも「練習」するつもりはないのかしら。さて、ここで町外れと町中の対比が気になります。語り手は町中の様子は把握しているけれど、そこにはいない。微妙な疎外感が最後の一行でかえって気になります。

蛇と女の組み合わせは、エヴァと誘惑者としての蛇を連想します。ミルトンの「失楽園」ではこの蛇は天使ルシファーの堕ちた化身とされます。ルシファーは天上で自分が一番神に愛されていると思っていたのにもっと愛されている子なる神が登場。これに怒り反逆の戦いを挑むものの敗残、サタンに変えられ、神が愛する人間をたぶらかそうと地上を目指します。このサタン、近代の人間の自由の苦しみとロマンティシズムの原点、と人気があるんです。Deacon Bluesに通じるでしょうか。

 This is the night 1
Of the expanding man 2
I take one last drag
As I approach the stand 2
I cried when I wrote this song 3
Sue me if I play too long 3
This brother is free 4
I'll be what I want to be 4

今夜こそは
意識拡張者の夜
俺は最後の一服吸って
ステージに向かう
俺は泣いた、この曲書きながら
言ってくれ、長くやりすぎたら
この男は自由だ
俺は在りたい俺でいる。

いよいよ演奏のチャンス到来でしょうか。Sue me起訴してくれ、とする訳も見かけました。でもSueはもともと「求めてor手を引くように請う」ことを指します。「おい、いつまで吹いてんだよ。いい加減にしろよ」と言っていいよ、ということでしょう。でも、演奏の途中に伝えるって相当大変…。

さいごのI’ll be what I want to beは「俺はなりたい俺になる」でもいいと思います。ただ、「なりたい自分になる」は自己啓発で使い古されたポジティブ表現。「成る」に10代のようなナイーブさを感じるのは私だけでしょうか。語呂の事情もあるしょうが、ここはbeの「在る」の禅語を思わせるニュアンスを遺したいと思いました。

長文、おつきあいありがとうございます。

ときどき、洋楽の詞なんて適当だという洋楽マニアの日本人を見かけます。そういうアーティストもいるかもしれません。ただ、Steely Danに限って言えば、サウンドをデザインし尽くしているのに、詞が「テキトー」なはずはないと考えます。「酒」ひとつとってもイメージのつながり、韻といった条件からlibation を選ぶという手の込みようです。

洋楽の詞を深く理解するには「言語の技法・作法」という扉を開ける鍵が必要です。鍵を持っていないからと言って扉がないことにしてはなりません。

私たちも完璧の先の自然を求めています
通訳道場★横浜CATS

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Steely Dan  Black Cowの歌詞を探検、訳詞で冒険

友に導かれて新しい世界に出会うのはなんとスリリングなことでしょう!

おちゃめなM姉さんからSteely DanのAjaというアルバムを教えてもらいました。全曲、あるいはこの2曲をとBlack CowとDeacon Bluesの訳詩をお望みです。まずはBlack Cow(ルートビアにバニラアイス!どんな味やら。)から…

とはいえ大変!ブログなどで訳詞を紹介する人たちは、ほとんどファンかそのジャンルの専門家。訳詞にも自信満々。でも英詩の作法や日本語の専門家ではないでしょう。

ところが私はその真逆。先月の今頃はSteely Danの名前さえ知りませんでした。聞いてみたら、あ、聞いたことある、というくらい。英詩と日本語表現にはうるさいですが、 Steely Danについてはからっきしです。 チャゲアスのことなら私が一番理解していると任じていますが、

そういうわけで、これが答えだ!ではなく問いを連発することになりそうです。50点の出来としてご海容ください。プラゴミじゃないと思います。

Steely Danの作品を聴いてみると…カッコいい、おしゃれ、クール、都会的、オトナ、洗練…そんな言葉が思い浮かびます。

細部まで計算しつくされた都会の建築のようで、心地よい流れはあるけれど、うっかりノリに流されることはなさそうです。

さて、Black Cowを聴いてみると…あれれ?歌のない時間が結構あるのね。第九とは対照的。「フロイデーシェーネルゲッターフンケントホターアウゼリージウム!」もう合唱で埋め尽くされています。それに比べるとなんて言葉少な…

歌詞を聴いておや?

単語は単純なものばかり。でもその組み合わせが文としては不思議。They saw your face.単語としては中1でもわかるけれど、Theyって誰?どんなface?

そう、説明しないのがニクい。形容詞がほとんどないんです。形容詞がありすぎると嘘くさくて、野暮で、レースだらけな下着みたいになりますが(自称芸術家の文章に多い)こちらはスポーツ下着みたい。なんだかそっけない。聴き手に向けて説明するそぶりなし、と感じましたが、どうでしょう?

そもそも、語り手の男性と、相手の元彼女のような2人の間にも会話は成り立っているののでしょうか。どこかひとりごとのようにも聞こえます。

そして現在単純形ばかり。現在単純形は日は東から昇り、西に沈む、のように永遠に変わらない、反復することを切り取る表現。別に今だけのことじゃなく繰り返す。何月何日、と具体化できる過去のリアリティもありません。ひとつのストーリーとしての始まりと終わりが定まらない…ひとつの物語として語ろうとすると突き放される感じです。そのほうが、おだやかでない状況をクールに奏でるこの曲に合っているように思いますが、どうでしょう?

「君はグリーンストリートで大暴れしたらしいね」という訳を見かけましたが、これはお話を作りすぎかも。ジャーナリズムじゃないんです。また、a book of numbersを旧約聖書としているのも見かけましたが、これはthe book of numbers民数記と取り違えたのでしょう。a, theを甘く見てはいけません。電話帳を a book of numbers というのは普通ではありませんが、ここは語調、曲調からa phone bookでは字足らずです。

Steely Danの公式サイトから下に歌詞をコピペしますが…韻を踏んでいます。各スタンザごとに番号を振りました。韻を踏んでいるということは、音がテクニカルに単語選びを大きく左右しているということです。単語ごとに辞書を見ていてはらちが明きません。なんだか歌詞も楽器のひとつのようです。このひとたち、詞が先?曲が先?もしかしてメロディーラインが先?

また、公式サイトにご本人たちがこの曲について語っている動画もありました。「作品の説明なんかさせるなよ」とでも言いたげな様子です。この曲については30分くらいからどうぞ。それにしてもこの人たちの風体…

心をこめて訳そうとすると、自分の感覚で言葉を足しがちです。でも、元の詩のスタイルがモンドリアンのように幾何学的なのに、ご親切に日本語にしたらラファエルのようだったら…。自分の解釈を訳から全く排除することは願ってもできません。でも、そうしようと努め、それでも残る訳者らしさが信頼されるようでありたと思います。

Break away when it seems so clear that it is now over のところはまだ会心とはいきません…別れた女をどう呼ぶかも悩ましい…お目汚しでございます。日本語でも韻を踏み過ぎるとあざといのでちょっと外しました。放っておくと七五調になりますが、それは気をつけてひっこめました。

In the corner 1
Of my eye 2
I saw you in Rudy's 3
You were very high 2
You were high 2
It was a cryin' disgrace 4
They saw your face 4
On the counter 1
By your keys 2
Was a book of numbers 3
And your remedies 2
One of these 2
Surely will screen out the sorrow 4
But where are you tomorrow 4
I can't cry anymore 1
While you run around 2
Break away 3
Just when it 4
Seems so clear 5
That it's 4
Over now 6
Drink your big black cow 6
And get out of here 5
Down to Greene Street 1
There you go 2
Lookin' so outrageous 3
And they tell you so 2
You should know 2
How all the pros play the game 4
You change your name 4
Like a gangster 1
On the run 2
You will stagger homeward 3
To your precious one 2
I'm the one 2
Who must make everything right 4
Talk it out till daylight 4

I don't care anymore 1
Why you run around 2 
Break away 3
Just when it 4
Seems so clear 5
That it's 4
Over now 6
Drink your big black cow 6
And get out of here 5

ちらっと
見かけた
ルーディズにいたろ。
君、とてもハイだった
ハイだった。
泣けるほど見苦しくて
奴らが君の面眺めてて。

カウンターには
君の鍵、
そばに一冊の電話帳と
君の薬。
このどれかが確かに
悲しみせき止める
でも君、明日はどこにいる。

もう泣けない
君が遊びまわって呆けても。
縁を切るんだ
とにかく
どう見ても
もう終わりと思ったら。
でかいブラッカウ飲んだら
ここを出るんだ。

グリーン街へと
君は繰り出す
途轍もない姿で。
奴らもそう君に言う。
わきまえろ
プロの手を。
君、名前を改めろ。

ちんぴらが
逃げるように
君は千鳥足で帰る
大切なひとのもとに。
僕はといえば
ひたすら後始末。
話し尽くそう夜明けまで。

もう気にしてられない
君が遊び回っても。
縁を切るんだ
とにかく
どう見ても
もう終わりと思ったら。
でかいブラッカウ飲んだら
ここを出るんだ。

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ケネディ元大使「お礼のことば」字幕に学ぶ

持続可能な未来のための通訳者、通訳道場主宰の冠木友紀子です。

毎月12回!行っている朝稽古では、日英両方で読める名作を少しずつ音読し、先人から学んでいます。たとえば、「手仕事の日本」(柳宗悦著)、「天声人語」、「神道バイリンガルガイド」、今をときめくノア・ユヴァル・ハラリの「21Lessons」など。

今朝、Eさんが用意したのはキャロル・ケネディ元駐日アメリカ大使のお別れの挨拶の一部。「ケネディ大使の英語はpure and simpleですてきなんですが、日本語が…」

おやおや、そういうこともあるものなんですね。ちょいと拝見。

前略
I am grateful to the people of Tohoku for
welcoming me and for inspiring the world
with your courage and resilience.
I was deeply moved
to meet students who are staying in the
region to work on revitalization,
local officials who put their communities
first despite great personal loss and
see the progress being made over the
past three years to rebuild lives and communities.
後略

「?」が残るという日本語は、大使館の仮訳です。太字のところが不思議、という意見が続きました。

私を温かく迎えてくれた東北の皆さん
皆さんの強さは世界を元気にしています
被災地に残って復興を助ける学生や
自らが被災しているにもかかわらず
復興に取り組む自治体職員の姿に
胸が熱くなりました。
人々の生活や地域の再建は
進んでいます

調べてみると、これはYouTubeの動画でした。確かに字幕は翻訳と違って、一定時間で表示できる文字数に限界があります。表現は文字ですが、時間との勝負である点、通訳と似ています。通訳の練習に字幕づくりはおすすめです。このご時世、家でもできますしね。

2分12秒あたりからどうぞ。

さて、太字部分について。「強さ」「元気」はちょっと深みに欠けるかもしれません。最後の一文がなんだか復興庁長官の発言みたいになっているのは、I was moved toと切れてしまったように見えるから。

そのへんを手直ししてみました。ただ、この動画は大使館のものなので公開で字幕受付をしていないので、おせっかいの焼きようがありませんが。外国語が使えるのと翻訳通訳ができるのはまた別のことです。日本語も外国語と同じ心構えで語源とともおに学び直し、イメージ思考を鍛えることが欠かせません。

東北の皆さんに感謝します。
皆さんは私を温かく迎え
勇敢に復活するその姿は世界を
奮い立たせてくれました。
被災地にとどまり復興に取り組む学生たちや、
自らひどく罹災しながらも
地元を最優先する自治体職員たちとの出会い
ここ3年の生活と地域の再建ぶりを
目にして深く心打たれました。


巣ごもり期間、お家で心躍る英語ストーリーテリングとそのまま語れる日本語小冊子「The Whisperiing Road」をどうぞ。



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Be動詞の由来はやっぱり…!

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

もうすぐオンライン?新学期。中1から大学生までみなさんもやもやしているのがBe動詞の正体。小さいお子さんならそんなこと考えなくても身体で覚えられますが、大きくなると、身体で覚えた後に頭で整理、心で納得したくなるのです。

I walk, you walk, she walkSと一般動詞の3単現はまだ許せる。でもなに、I AM, You ARE, She ISって違いすぎる。

狭き門より

ドイツ語にもBe動詞はあります。ほかの動詞と全然違います。

その由来を、ルドルフ・シュタイナーはある講座ではっきりサンスクリットと答えて単語も挙げているのです。

英語の am, are, isもサンスクリットの「私、あなた、あの人」が変化したもの。だからほかの動詞と人称変化も時制変化も全然違うのですね。

この講座、シュトゥットガルトのヴァルドルフ学校の先生のために自然科学の講座をしに出かけていったら、ついでに言語についても話してくれと頼まれたそう。 もちろん資料も辞書も準備も何もなし。なのにどんどんラテン語、サンスクリット語、さまざまな引用にあふれていて驚くばかりです。

ただ、講演録はシュタイナー自身の校正、校閲、許可なしに、亡くなってから出されたもので…それでもこうして読めることに感謝して、せいいっぱいの独日訳をしてみます。ふだん英日で十八番にしているさまざまな手法をいったんひっこめて、新境地を味わっています。お粗末さまです。


Geisteswissenschaftliche Sprachbetrachtungen -Eine Anregung fuer Erzieher/Rudolf Steiner

精神科学にもとづく言語をめぐる考察―教育者のための提案
ルドルフ・シュタイナー

第1講

何名か、私たちの友なる方々が、今回の滞在中に、皆さんに言語についても何か話すようにと頼みに来られました。自然科学講座にまして、申し上げておかねばなりませんが、自明のことながら、実に急に出てきたお願いを受けて、このわずかな時間で皆さんに語られることは、ごく簡略なものになるでしょう。自然科学講座での考察にまして、これらの言語観察は善意と寛容をもって受け止められねばなりません、というのも、それらはまるっきり準備なしの即興だからです。何かできるとしたら、とりわけヴァルドルフ学校での我々の授業、あるいは授業一般の役立つヒントを差し上げることでしょう。

おそらく、何に注目すべきなのか、最良の方法で捉えるには、言語を歴史的視点からあれこれ考察してみることでしょう。そこで皆さんにご承知おき願いますが、私が今日申し上げることは、さまざまな把握すべき注釈をゆるくまとめたもので、私たちがこれからのわずかな時間、互いに取り組むであろうことの導入にあたります。

実にはっきりしているのは、ドイツの言語を観察すればわかるように、ある人々の言語において、その発達を通じて、魂の在りようの発達そのものが表れるということです。(後略)

持続可能な未来のための通訳者 冠木友紀子プロフィール

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「すっぱいぶどう」新コロ休校中高生無料通訳道場レポート②

 中高生無料オンライン通訳道場を開催してからもうすぐ1月。地方も学年もミックス、普段の学校の枠を超えたドキドキの試みでした。

紆余曲折の末、通訳素材に選んだおはなしはイソップ寓話の「Sour Grapes」。あのきつねとぶどうのお話ですこれ、プログレスというミッションスクールで長く愛された教科書の中1のおしまいに出てきます。

 Sour Grapes
 
     One day a fox saw some grapes.
They were hanging from a tree and so they were very high above the ground.
It was a hot day and the fox was hungry and thirsty.
‘Oh, look at those beautiful grapes,’ he said and jumped up.
But the grapes were too high. He couldn’t reach them.
He jumped up again and again.
But he couldn’t reach the grapes.
Finally he was very hot and tired.
‘Oh, I didn’t want those grapes,’ he said.
‘Maybe they were sour anyway.’
 
From Progress in English 21 Revised1

え、中1?それでは上級生が退屈では?

そんなことないんですよ!

「ソバ」「バラ」漢字で書けますか?私、書けません。でも読めます。読めても書けないってあるでしょう。中1のお話なら高校生は辞書なしですらすら読める。でも通訳トレーニングでアクティブに、となるとなかなか手ごわいのです。通訳トレーニングは受信力と発信力のギャップを埋めるのにぴったりです。

みんなと私でシャドウイング、2人組でリピーティング…など頭をからっぽにして割と体育会系ぽくこのお話を耳と口に何度も何度も流しました。おはなしが耳と口から心にしみこんだときに、誰ともなくこんな声があがりました。(実際は英語だったり、日本語だったり。)

「きつねがかわいそう。」
「何度も飛び上がったがんばりをなかったことにするの?」
「ぶどうがすっぱいことにしないと耐えられないくらい悲しかったのかも。」
「誰か一緒にいたら違ったんじゃない?」
「もっときつねの身体にいいものがこの先にあるけど、きつねは知らないんだ。」

「自分がきつねだったらどうする?」
「自分がぶどうだったらどう思う?」
「誰の助けをもとめる?」

ギリシャのぶどう園の写真も見てみました。日本のように大きな木を棚にはせず、低木にしています。だから木からぶら下がっているなんてめずらしい。切羽詰まったきつねは尋常でない難題にチャレンジしていたのです。

greentours.co.uk より

このことは第2文They were hanging from a tree and so they were very high above the ground.がちゃんと語っています。勝沼のぶどう棚なんか想像していては誤読です。言葉が適切な映像に変換されることを「読んでわかる」といいます。

一見スピード勝負の通訳も、深く細やかな読み込みと想像に支えられています。そのことを若い皆さんと再確認できたのはありがたいことでした。

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すっぱいぶどう

ある日のこと、ふときつねの目に入ったのはぶどう。
木からぶら下がっていたのでたいそう高く、地面のはるか上でした。
その日は暑く、きつねはお腹がすいて、喉も乾いておりました。
「わあ、ごらん、あの見事なぶどう!」そう言って飛び上がりました。
でもぶどうは高すぎで、きつねの手には届きません。
きつねはなんどもなんども飛び上がりました。
でもぶどうは手に届きませんでした。
ついにきつねはとても暑くなり、くたびれてしまいました。
「あーあ、欲しくなかったんだ、あんなぶどうなんて」きつねは言いました。
「たぶん、どのみちすっぱかったんだろうし。」

冠木友紀子 訳
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新型コロナウィルス戦争用語に疲れた心のためにー【アッシジの聖フランシスコ★創られしものの讃歌】

「新コロとの戦争」「ウィルスを撲滅」「団結」「勝利」

勇ましい言葉とうらはらに、人々の心は疲れ、不安にさいなまれているのではないでしょうか。

言葉は心を、人をつくります。敵対ではなく、謙遜、感謝、和解、受容にいたる言葉を大切にしたいと私は願います。

一昨日来、ふとアッシジの聖フランシスコの「創られしものの讃歌」が思い浮かびました。この時季に皆さんと分かちうようにという知らせだったのかもしれません。フランシスコ会のラテン語から訳しました。

まあしかし、訳すことのはひとつを選び、他をすてるジレンマがあります。スタイルひとつとっても敬体?常体?会話風…なら標準語?東北?女言葉、男言葉…子ども言葉…とさんざん悩みました。そしてまず打順1番は…私自身にしみ込んでいる讃美歌ふうプチ文語体にしてみることにしました。

皆さまの心に平安がありますように。

創られしものの讃歌(被造物の讃歌、太陽の讃歌とも)

いと高き、力に満てる 善なる主よ
賛美、みさかえ、ほまれ、すべての祝福(ことほぎ)は汝のもの
このすべて、汝のみもとにのみ集う、いと高き主よ
なんびとも汝のみ名を口にするに値せず。

わが主よ、創られしすべてとともに汝が讃えられんことを
まず、長なる兄弟、太陽とともに
太陽は日。汝、我らを太陽により照らしたもう
美しく、光を放ち、大いに輝く太陽は
いと高き主よ、汝に似通う。

わが主よ、姉妹なる月と星々ゆえに汝が讃えられんことを
さやかにきらめく、尊く、美しい天の月星ゆえに。

わが主よ。兄弟なる風と空気ゆえに汝が讃えられんことを
曇るとき、晴れわたるとき、あらゆるとき
すべてにより、汝、創られしものを保ちたもう。

わが主よ 姉妹なる水ゆえに汝が讃えられんことを
いと用いやすく、つつましく、尊く、清らかな水ゆえに。

わが主よ、兄弟なる火ゆえに汝が讃えられんことを
火により汝、夜を照らしたもう
美しく、楽しく、堅く、強い火のゆえに。

わが主よ、我らが姉妹である母なる大地のゆえに汝が讃えられんことを
大地、我らを保ち、統べたもう
さまざまな実りと色とりどりの草花を生み出したもう。

わが主よ、汝の愛によりて赦し、病と苦しみを担う人々ゆえに汝が讃えられんことを。

幸いなるかな、心安らかに耐える者、
いと高き汝より冠を授からむ。

わが主よ、姉妹なるからだの死ゆえに汝が讃えられんことを
なんびともこの姉妹より逃げること能わず。

あわれ、滅びに至る罪のうちに死にゆく者
幸いなるかな、いと高き聖なるみこころのうちに死にゆく者
第二の死、彼らに害を為さざるなり

わが主をたたえ、ことほぎ
感謝し、大いに慎んで仕えよ

ラテン語より、冠木友紀子訳

通訳道場第5期 オンラインで開催します。ご相談会お申込み受付中!

ご参考まで Commission on the Franciscan Intellectual Traditionより

ラテン語

1Altissime, omnipotens, bone Domine,
tuae sunt laudes, gloria et honor et omnis benedictio,

2tibi soli, Altissime, conveniunt;
et nullus homo est dignus te nominare.


3Laudatus sis, mi Domine, cum universa creatura tua,
principaliter cum domino fratre sole,
qui est dies, et illuminas nos per ipsum;

4Et ipse pulcher et irradians magno splendore;
de te, Altissime, defert significationem.

5Laudatus sis, mi Domine, propter sororem
lunam et stellas,.quas in caelo creasti claras, pretiosas et bellas.

6
Laudatus sis, mi Domine, propter fratrem ventum
et propter aerem et nubes et serenitatem et omne tempus,
per quod das tuis creaturis alimentum.

7
Laudatus sis, mi Domine, propter sororem aquam,
quae est perutilis et humilis et pretiosa et casta.

8Laudatus sis, mi Domine, propter fratrem ignem,
per quem noctem illuminas,
et ipse est pulcher et iucundus et robustus et fortis.

9Laudatus sis, mi Domine, propter sororem nostram matrem terram
quae nos sustentat et gubernat,
et producit diversos fructus cum coloratis floribus. et herba
 
10Laudatus sis, mi Domine, propter illos, qui
dimittunt propter tuum amorem,
et sustinent infirmitatem et tribulationem.

11Beati illi, qui ea sustinebunt in pace,
quia a te, Altissime, coronabuntur.

12Laudatus sis, mi Domine, propter sororem mortem corporalem,
quam nullus homo vivens potest evadere.

13Vae illis, qui morientur in peccatis mortalibus;
beati illi, quos reperiet in tuis sanctissimis voluntatibus,
quia secunda mors non faciet eis malum.

14Laudate et benedicite Dominum meum,
gratias agite et servite illi magna humilitate.
 

英語

Most High, all-powerful, good Lord,
Yours are the praises, the glory, and the honor, and all blessing,
To You alone, Most High, do they belong, 
and no human is worthy to mention Your name.

Praised be You, my Lord, with all Your creatures, especially
Sir Brother Sun,
Who is the day and through whom You give us light.
And he is beautiful and radiant with great splendor;
and bears a likeness of You, Most High One.

Praised be You, my Lord, through Sister Moon and the stars,
in heaven You formed them clear and precious and beautiful.

Praised be You, my Lord, through Brother Wind,
and through the air, cloudy and serene, and every kind of weather,
through whom You give sustenance to Your creatures.

Praised be You, my Lord, through Sister Water,
who is very useful and humble and precious and chaste.

Praised be You, my Lord, through Brother Fire,
through whom You light the night,
and he is beautiful and playful and robust and strong.

Praised be You, my Lord, through our Sister Mother Earth,
who sustains and governs us,
and who produces various fruit with colored flowers and herbs.

Praised be You, my Lord, through those who give pardon for Your love, and bear infirmity and tribulation.

Blessed are those who endure in peace for by You, Most High, shall they be crowned.
 
Praised be You, my Lord, through our Sister Bodily Death,
from whom no one living can escape.
Woe to those who die in mortal sin.
Blessed are those whom death will find in Your most holy will,
for the second death shall do them no harm.
 
Praise and bless my Lord and give Him thanks
and serve Him with great humility.

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通貨・数字の通訳はどうする?

「億単位の金額が飛び交うと…」(わあ、すごい)
「通貨の計算に戸惑います…」

無理しなさんな。そんなところでかっこつけても仕方がない。

ちょっと才走った通訳嬢がすらりと通訳したつもりで、そのあげく、あとで言った言わないのもめごとになるのが数字、金額。

社内ならまだしも、フリーランスが請け負ったクライアントの案件だったらひとたまりもありません。

F1レーサー、日光いろは坂のバス運転手さんを思いうかべてください。

プロは直線とカーブではスピードを変えるでしょ?

どこでもかまわずすっ飛ばすのがかっこいいと思っているのは自己中心的な初心者です。

私は、数字には通訳メモとは別に大きめのポストイットを使います。先方の現地価格、数量をメモ。これでいい?とメモを先方に確認。換算して日本側に伝えます。それを海外、日本側両者で確認。参加者のどなたかに協力をお願いして、いつの、何についてのメモなのかタイトルを書いていただきます。

みなさん、喜んで協力してくださいますよ。誰もが順調かつ正確なコミュニケーションを望んでいるんですから。それに、人に頼りにされるってうれしいでしょ?

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国産チーズパンフ英訳、翻訳の前に大事なこと

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

自動翻訳もずいぶん精度が上がりました。それでも翻訳者がやらねばならないことが1つあります。

新しい読み手を想像することです。ゼロから書く心づもりでいることです。
(もちろん分野によります。自然科学論文、文芸作品はこの限りではありません。)

考えてみれば当たり前のことです。言語を変えるということは、異なる読者層を対象にするということです。

共働学舎の宮嶋さんからのご紹介で、チーズプロフェッショナル協さんの国産チーズパンフの英訳を担当したことがあります。共働学舎のチーズ大好きな私には願ってもないお話。大いに張り切りました。

もとのパンフはすみずみまで工夫が凝らされた素晴らしいものです。チーズになじみのない日本人に向けて、多種多様なナチュラルチーズの製法と楽しみ方を紹介。チーズの専門家、有名人のインタビュー記事は国産チーズに親しみを感じさせます。生産者のインタビューは情熱にあふれ、思わず応援したくなります。

さて、最初のご依頼は「全部英訳」

ん???

ここで新読者確認です。

英語はあまりに世界で広く使われすぎています。誰でも読めるけれど、誰も自分宛てと思わない可能性も大です。英訳の難しいところです。宛名のないラブレターになってはもったいない。

依頼主に確認したところ、主にヨーロッパとのことでした。

そうなると日本人向けの丁寧な説明部分はかえって冗長、不要となります。ヨーロッパのみなさんは先刻ご承知ですから。チーズの専門家、有名人のインタビュー記事もあまり意味をなしません。かえって生産者の声がかすんでしまいます。

優しいイラストからはもうチーズが薫るよう!

生産者の声にしぼることになり、英訳を始めると…今度は生産者の「日本人向け」のメッセージが気になりました。

「おいしさの感度って他国と日本は違います。日本人はきれいな味が好き。だから日本人シェフたちの意見を聞きながら僕は雑味のない味を目指してきました。」

ごもっともです。日本の地に足をつけた見事なお仕事。ヨーロッパ輸入チーズの強い風味が苦手なひとでもおいしく楽しめるのはこういうたゆまぬ努力あってこそです。

でも、ヨーロッパの人たちにはこう聞こえませんか?
「日本のおいしさの感度は特別です。日本人はきれいな味が好き。他国はきたない味でもいいみたいだけどね。だから日本人シェフの意見を聞きました。他国のシェフのアドバイスきくと雑味のあるものができちゃうかもしれないからね。」

大げさかもしれません。でも、この生産者の方はこんないやな意図で話したわけではありません。ならば誤解の芽はできるだけ摘んでおきたい。そこで、誤解の可能性について依頼主に連絡し次のような修整を打診しました。

「おいしさの感度って地域それぞれです。日本人はどうも繊細な風味が好き。(そうした味づくりに慣れた)日本のシェフたちに相談しました。おかげで気になるいやな雑味のない風味が生まれました。」

するとすぐに協会と広告会社で話し合いがもたれ、これで行こう、ということになりました。迅速かつ柔軟な対応はさすが、とありがたく思いました。

また、日本のチーズを喜んでもらえるのは、ヨーロッパでも多数派の風味がしっかりしたチーズが苦手な人たちだということも見えてきました。(ヨーロッパの友人にいます。気の毒…)

英文はこのとおりです。
“Taste preferences vary from country to country and region to region.Japanese people tend to prefer subtle, delicate flavors. To acheive such flavors without any unpleasant distraction, I consulted with servera Japanese chefs.”

将来、納豆のねばねばと苦さが嫌いな日本人のために、ヨーロッパからさらっとして臭くないナッツのようなフレーバーの納豆がやってきたら面白いですねえ。

翻訳は新しい読者を想定して、ゼロから書くつもりで。人間だもの。

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