気になる洋楽歌詞和訳【On My Way】 by Alan Walker, Sabrina Carpenter & Farruko

通訳道場の悦子さんにすごい人のことを教えてもらいました。

アラン・ウォーカーという音楽プロデューサーです。
いや、この人すごい。
10代の頃からPCで楽曲制作、どんどんYouTubeに上げて、あっというまに大ヒットメーカー。それでもいつもパーカかぶって顔をかくしているとか…。ソニーの公式ページによるとまだ21歳ですって?

ITを駆使した時代の寵児、天才です。

なんでも、アラン・ウォーカーAlan Walkerとサブリナ・カーペンターSabrina Carpenter、ファルッコFarrukoがコラボした楽曲『オン・マイ・ウェイ On My Way』が気になって、検索してみたら腑に落ちない和訳が目についたのだそう。

私も調べてみました。

いやあ、ネットのおかげで誰でも発信できるようになりました。

アラン・ウォーカーのような才能が世に出るのと同様、
いまいちな情報も出まくりです。

すべて注釈を入れるのはご容赦願いまして、気になるところだけ…

I’m sorry but 
Don’t wanna talk
I need a moment before i go
It`s nothing personal①

I draw the blinds
They don’t need to see me cry
Cause even when they understand
They don’t understand

So then when I’m finished
I’m all ‘bout my business
And ready to save the world
I’m takin my misery②
Make it my bitch③
Can’t be everyone’s favourite girl

So, take aim and fire away④
I’ve never been so wide awake⑤
No, nobody but me can keep me safe
And I’m on my way
The blood moon is on the rise⑥
The fire burning in my eyes
No, nobody but me can keep me safe
And I’m on my way

すまないけれど
話したくない
少し時間を、発つ前に
悪気はないの

ブラインド降ろす
あの人ら、私の涙見なくていい
だって、わかってるつもりで
わかってない

だから、すべてが済んだら
私はやるべきことをやる
すぐにだって世界も救える
自分の惨めさ引き受けて
すごい玉にしてみせる
みんなのかわい子ちゃんじゃいられない。
だから、狙い定めて撃ち尽くす
こんなに冴えてたことはない
私のほかに誰も私を守れはしない

私は私の道をゆく
紅月が昇りゆく
私の目にも炎が燃える
私のほかに誰も私を守れはしない

私は私の道をゆく

別に都都逸や演歌にするつもりはないのですが、どうも調子づいてしまいますなあ。

①これは個人的なことではない=私的な悪意ではない、ということ。IRAを描いた映画でNothing Personalというのがありましたねえ。

②takeの基本のしぐさは自分の領分の外にあるものごとに手を伸ばし、領分内に引き入れる動き。「惨めさを振り払う」という訳はoffの幻を見てしまったのでしょう。いやなものをさっさと振り払っていては本当の変容は無理です。

③ここは難所。bitchはson of a bitchでご存知の通りあばずれな雌犬。ただ、極端な意味の単語はわざと反対の意味で使われることも。英語ならwicked、日本語なら「ヤバい」がその例。この歌全体として今のどん底状態から「逆転」を宣言していると考えると、「あばずれ雌犬」の逆の意味と解釈するのが自然。ただ、「素晴らしい女性」なんて訳すといきなり「家庭画報」の世界になってしまって、ビッチの音の響き、逆転の妙味が活きません。そこで、「玉」としました。

④awayはホームとアウェイのアウェイだけではなく、間断なく続ける様子、完全になされる様子を表すこともあります。この場面、狙い定めて一発撃ってありゃ、外れ、失敗!ではいかんのです。一発でしとめられればそりゃ結構ですが、この主人公はon my wayと続く自分の道を歩む、つまり継続を覚悟しているようですから、撃ち「尽くす」としました。

⑤ここは睡眠時無呼吸症候群のような誤訳が多いです。「こんなにすっきり目覚めたことはない。」この人、寝起きだったのですか?それならI have never woken up so refreshed.とかでは?awakeは目が覚めている状態。 wideは十分に開いている、という意味。widelyではなく wideと組み合わせる語は限られていて意味にも注意が必要です。私がこの表現に出会ったのは17歳のとき。カーペンターズの I Need to be in Loveの一節でした。I’m wide awake at four a.m. without a friend in sight. Hanging on a hope but I’m alright.のところ。これもまた気の毒な状況ですが、この歌の邦題は「青春の輝き」。

⑥ブラッドムーンは皆既月食のときに見えます。その月影が目に移り込んで炎のようだというんですから、尋常じゃありません。まあ、気が済むようにするしかありませんけどねえ。

いかがでしたか?私も絶対これが正しいなんて思っているわけでもありませんので、どうぞ皆さんのご意見をお聞かせください。

カーペンターズとチャゲアスがmy wayの冠木友紀子のプロフィール

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通訳道場★朝活とシュタイナー「魂のこよみ」

通訳道場参加者限定の朝活。月12回朝8-9時にzoomで稽古(!)しております。

これがいいんです。毎回それぞれ話す内容を準備するのですが、まあ、人の話には思いがけないこと、教わることばかり!話す方も通訳してもらうつもりで話しますから、話し方が整ってきます。相当長いまとまりを通訳していますが、生き生きときれいに訳せています。友人同士ですから、平板な従来型通訳口調ではおかしいですもんね。

今日の話題は…中国で優秀な警察犬のクローンを作ろうとして議論になっているということと、トランプ大統領がグリーンランドを買い損ねてへそを曲げてデンマーク訪問を取りやめたということ。

通訳し合うだけでなく、意見交換もします。

この2つのテーマを重ねて透かしてみると…「対象意識」という言葉が浮かんできました。

自分以外のものごとを「対象」と捉え、意のままに操ろうとする態度のことです。そこに共感や想像はありません。「対象」に与えた痛みをやがて自分も味わうことになるとは思わずに…

私にはシュタイナーの「魂のこよみ」20週目の詩が気になりました。

実はドイツ語祭り(=学習)の一環として、週ごとの「こよみ」の詩を訳そうと思い立ったところでした。

訳そう、と思うと能動スイッチが入ります。ひとこともゆるがせにできません。ああでもない、こうでもない、ここはどうして言い換えてあるんだろう。この語の語源、おおもとの仕草はどんなだろう。もう、ずっと考えています。覚えてしまいます。高橋巌さん、秦理絵さんの訳も、訳者の頭の中を想像しながら、ありがたく拝見します。

これが読者として受け身なままでいると、「シュタイナーってなんか難しい。訳語がカタいんじゃない?」と浅はかなブータレに終始しがちです。

で、あくまでも私訳の試訳ですのでお手やわらかに…

So fühl ich erst mein Sein,  
Das fern vom Welten-Dasein  
In sich, sich selbst erlöschen  
Und bauend nur auf eignem Grunde  
In sich, sich selbst ertöten müsste.
             -Rudolf Steiner

こう私は感じる、自身の在りようを-
遠く世界存在から離れては
己のうちに、己を消し去ることになり
己のみに拠り立てば
己のうちに、己を死なせることになると。
(「魂のこよみ」第20週   冠木友紀子 試訳)

グーグル翻訳もがんばっています…でも、詩や哲学は苦手ですねえ。

それが私が最初に感じる方法です
世界の存在からは程遠い
それ自体で、それ自体を消すために
そして、独自の根拠に基づいてのみ構築
それ自体で、自分自身を殺す必要があります。

持続可能な社会のための通訳者 冠木友紀子のプロフィール

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幕末横浜の「外国語」は?

ある中1のクラスでこんなことを耳にしました。
「日本語と英語は語順がちがいまーす。」(←間違ってる)
「英語は日本語と違って名詞の前にaとかtheとかつきまーす。」(←半端なこと言うな)

入門期に不適切に「差異」を協調するのってどうなんでしょうね。
あんまり英語を「外国語という壁」として示さないほうがいいんじゃないかと思いますけどね。

というわけで、英語の授業視察はなんだかんだ理由をつけてご遠慮しています。耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ばなくてはならないから。

そもそも、幕末、明治初期の横浜は外「国」語という概念が薄かったようです。言語をナショナルなものとは捉えてはいなかったということです。

参勤交代のため、江戸はもちろん、横浜に近い東海道の宿場町もさまざまな地方の方言が飛び交っていました。当時、書き言葉に共通の文体はあっても、共通の話し言葉、いまの標準語のような言葉はまだなかったのです。( だからなんでもかんでも標準語にしか訳せない通訳者はちょっと居心地の悪さを感じてよろしいのです。)

どのくらいバラエティがあったかというと…たとえば標準語の「かまきり」も…

おがめ(岐阜・高知・佐賀・熊本・宮崎・鹿児島)
かまぎっちょ(茨城・栃木・埼玉・千葉・福岡)
いぼむし(宮城・秋田・山形・福島・新潟)
いぼくい(むし)(青森・岩手・千葉)
とかげ(!!)(埼玉・千葉・東京・山梨)
はらたち(群馬・千葉)
へんぼ(愛媛・高知)
ほとけうま(淡路島・徳島)
(「都道府県別 全国方言辞典」 佐藤亮一編 三省堂より)

これに
めあーんてぃす(英)
もーんと(仏)
ふぁんぐしゅれっけ(独)

が加わったところで「へえ?それが何か?」でしょう?

言葉は国家ではなく地元で共に暮らす人びとと結びついていたといえそうです。

そういえば、私たちのひいひいひい爺さん婆さんたちはきっと、自分たちを「日本人」だなんて思っていなかったでしょうね。「くに」といえば藩でしたから、「相模のひと」「会津のひと」という具合で。

昔も今も「この人の言っていることを理解したい」という願いが人を言葉に近づけるのだと思います。

さて、横浜といっても街中と違って日本人が体系的に英語と出会った場所がありました。さて、どこでしょう?それを次回以降ご紹介します。

持続可能な医療・農業・教育のための通訳者 冠木友紀子のプロフィール

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横浜ハイブリッド言葉は何でもアリ!

外国語を学ぶには実に便利な時代になりました。辞書など当たり前、オンラインの講座もあれば、海外渡航も容易です。学ぶのが面倒であれば通訳も頼めます。

でも160年ほど前、開港したばかりの横浜はどうだったでしょう?

辞書も、講座もなく、プロ通訳(通詞)もわずかなまま、いきなりいろいろな国の人たちが顔を合わせていました。日本人、アメリカ人、イギリス人、フランス人、清をはじめアジアの人たち…なんとか日々の用事を済ませなくてはなりません。

こうなると、お互いの言葉をかいつまんで復唱しながら、なんとか確認…そんなことを続けていると、言語どうしの境目がほろけてくるようで…持ち寄り言葉、つまりハイブリッドの誕生です。これが傑作。

「日本人の翻訳」(亀井秀雄著)にはこのあたりの経緯がとても面白く書かれています。

本牧の司教を名乗る人物が、来日するアメリカ人のために書いた横浜語の演習問題が載っています。もちろん、司教は日本語は書けませんから、横浜言葉もアルファベットで書き留めてあります。さあ、なんと言っているのでしょう?

Ginricky pshaw motty koy-ginricky pshaw arimasen, mar motty koy! Mar sick-sick, betto drunky drunky, koora serampan. Oh my piggy jiggy jig, watarkshee punguts sinjoe arimas.

だいたいこんな感じのようです。

人力車、持って来い。人力車、ありません。馬もってこい!馬、具合が悪くて、別当はへべれけ。鞍、こわれてます。お前、ペケ、早くしろ。私、プングツ進上あります。(私の推測も入っています)

なんとオランダ語の「どろんけん」(=酔っぱらう)、マレー語の「せらんぱん」(=壊れている)がそのまま。

傑作なのは、「bad 悪い」をworry、「churchお寺」をho terrorと写し取っているところ。

異国情緒たっぷりでバタ臭いと思われがちな横浜ですが、この何でもアリな感じは面白そう。

もし今の世界にこういうところがあったら、「正確で聴きやすい通訳」などはいったん脇において、わいわいやってみたいものです。

持続可能な医療・農業・教育のための通訳者 冠木友紀子のプロフィール

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仏像を英語で案内するなら

講座の通訳をしていると、あいまに休日の観光案内もご一緒することがあります。

先日も京都にご一緒させていただきました。さすが、京都のお寺はインバウンドの方たちでにぎわっています。タクシーで移動中、アメリカからの講師の先生から訊かれました。

「そういえば、講座が始まる前の日、京都駅の近くを観光したんだけれど…ええと、あれはどこだったかしら。すごく変わってて、おんなじような小さい仏像がずらーっと並んでるところ。普通違うわよね。」

ああ、それは三十三間堂。ずらーっと並んでいたのは千手観音Sahasrabhuja。「普通の」とおっしゃるのは、 ボスが真ん中にいて、左右に2体サポーターがいて、さらにその周りに警備員…のような、でしょう?それは 三尊形式(中尊と脇侍二尊から成る)というそうですよ。

そう。通訳者にとって医学に引けをとらず勉強しがいがあるのが仏教です。事前準備が必須です。

お寺に行ってその場で説明を英訳すればいいや、最近は説明も英語になってるし、なんて慢心はいけません。薬師如来はMedicine Buddhaあたりでごまかせたとしても、阿弥陀如来はどうします?阿弥陀って何?!如来と菩薩の違いは?持国天の天はheavenでいい?(良いわけない!)

その場であわてるのはもったいないです。

仏教の言葉は奥深くて、サンスクリット語、ヒンズー教、中国語、日本仏教がミルフィーユのように重なっています。あまりに面白くて通訳の準備だったことなど忘れるくらいです。そう、そんなこと忘れて没頭したほうがよいのです。

本当にきりがありませんから、今回は高校生の修学旅行にもおすすめの「これだけは」の分だけをご紹介します。アクサン記号がうまく出なくてちょっと困りました。長母音は母音字のあとに「-」をつけました。

  • 仏像の4種類(部)
    • 如来 tatha-gata
    • 菩薩 bodhisattva
    • 明王 vidyaraja
    • 天 deva
  • それぞれの部のメンバー
    • 如来
      • 釈迦如来 Sha-kyamuni / Buddha
      • 薬師如来 Bhaisajyaguru / Medicine Buddha
      • 阿弥陀如来 Amita-bha / Buddha of Infinite Light
      • 大日如来 Maha-vairocana
    • 菩薩
      • 弥勒菩薩 Maitreya
      • 聖観音菩薩 A-rya-valokitesvara
      • 十一面観音菩薩 Eka-dasamukha
      • 千手観音菩薩 Sahasrabhuja
      • 文殊菩薩 Manjusri-
      • 普賢菩薩 Samantabhadra
      • 地蔵菩薩 Ksitigarbha
    • 明王
      • 不動明王 Acalana-tha
      • 五大明王
      • 降三世明王 Trilokavijaya
      • 軍荼利明王 Kundali-
      • 大威徳明王 Yama-ntaka
      • 金剛夜叉明王 Vajrayaksa
      • 愛染明王 Ra-gara-ja
      • 梵天 Brahna-
      • 帝釈天 Indra
      • 持国天 Dhrtara-stra
      • 増長天 Viru-dhaka
      • 広目天 Viru-pa-ksa
      • 多聞天 Vaisravana

こちらの本、おすすめです。「仏像バイリンガルガイド」バイリンガルで、コンパクトなのに内容も充実していてイラストも綺麗。おみやげにプレゼントしても喜ばれます。



お寺にも花のあふれるこの季節。よい週末をお過ごしください。

通訳道場★横浜CATS 第5期




  

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はじめてのブラックフライデー

ブラックフライデー=収穫感謝祭の次の金曜

いや、もうすごいですね。ネット通販、大手小売りに国境はないようで、日本でもブラックフライデーなんて言うようになりました。よく言われる由来はこんな感じでしょうか。

「収穫感謝祭の次の日がクリスマス準備の買い物の初日。大安売りの書き入れ時でそれまでさっぱり儲からなかったお店も『黒字』になる。」

こんなふうにコンパクトにまとまったのは最近のようですよ。

もっとブラックなアメリカ最初のブラックフライデー

ブラックと言えばブラックマンデーを思い出す方が多いのでは。どうやらその感覚は間違っていないようです。いまわかっている限りでは、1869年9月24日がその日。Jay Gould と Jim Fiskというウォールストリートの腹黒2人が金を買いまくり、値を釣り上げて売り抜けて大儲けしようと企みました。この陰謀を知ったグラント大統領は国庫から金を大放出。相場は暴落して多くの資産家、企業がとんでもない被害を被ったといいます。

その後、いろいろな説が出てきて…木曜から日曜まで4連休したい労働者が病欠しまくるので会社は困るとか…フィラデルフィアが買い物客でごった返しておまわりさんたちがうんざりしたとか…

最近ではイギリスでもアマゾンをはじめアメリカ企業の影響でブラックフライデー=お買い物と定着してきているそう。私がリーズ大学にいたころは影も形もありませんでしたが。

世界初のブラックフライデーは11月ではなく…

11月にブラックフライデーときいて「え?」と思いました。春じゃなくて…?そう、ブラックフライデーはそもそもイエス・キリストが十字架にかけられた日。お買い物どころではありません。忌引きです、喪中です。

1869年のウォールストリートの人たちも十字架にかかった気分だったのではないでしょうか。

こちら、ヒストリーチャンネルのサイトにも詳しい記事がのっています。
What’s the real history of Black Friday?

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大坂なおみ選手、I’m sorry it had to end like this.の訳は?

「大坂なおみ選手のインタビュー記事読んでたんだけど、翻訳に違和感があって。通訳者としてどう思う?」
30年来の友人からメッセージが来ました。日本語と英語両方チェックしてたのですね。さすが。

なんでも、I’m sorry it had to end like this.の出だしが「ごめんなさい。」になっていたとか。

あら、朝日新聞もそう。写真をクリックしてご覧ください。

朝日新聞も「すみません」

あちゃー。

「ごめんなさい、勝ってしまって。」としている訳まであるとか。大坂選手、そんな嫌味を言う人柄とは思えません。

I’m sorry をひとかたまりで「ごめんなさい」と置き換えてはいけません。そんな訳には、大坂選手に倣ってI’m sorry it had to be translated like this.といいたいところ。私、ごめんなさいなんて言ってませんよ。

ものごとは「細かく割って見る」のが大切。カタマリはだめです。球が止まって見える一流選手は時間を細かく割っているといいます。言葉でもその感覚がないと不自由、誤訳のもとです。

sorryはsore痛み+y(形容詞化する語尾)。

喉が痛いのをsore throatと言う、あのsoreです。
ちなみにsoreの語源は古英語のsarig(ほんとはaの上にバー)。

ですから、I’m sorryはそもそも「私は心痛めています。」という意味です。そのあとに心痛める原因、状況が続きます。

たとえば…
「I am sorry a bright student like you have handed in something like this. 残念だね、君のように頭脳明晰な生徒が提出したのがこんなものだとは。」
「We are sorry the typhoon have totally damaged our crop.遺憾なことに、あの台風のせいで作物がみんなやられてしまった。」

I am sorry.が「ごめんなさい」になるのは、後半で言うはずの自分がやらかした失態を省略した場合です。

でも大坂選手は失態をやらかしたわけでも、後半を省略したわけでもありません。

I’m sorry it had to end like this.は「残念です、こんな終わり方になって。」といったところでしょう。

後半の主語をitとしてセリーナも自分も出さず、had to を使っています。誰も責めずに、最少限の語数で最大限の思いを表しています。大坂選手、口数の少なさも魅力です。

「なんだか残念だわ、こんな風に終わることになっちゃうなんて。」でも間違いではないのですが、なんだか同じなおみでも渡辺直美ちゃんぽいです。

「このような終わり方を迎えることとなり、心を痛めています。」となると天皇陛下です。

ひとりひとり、違うのです。

だから通訳者は徹底的に聴きます。翻訳も同じことです。よく聴いてから翻訳すれば、言語を超えても本人の息遣い、声が聞こえてくるものです。

そんなことできる?できます。やっています。そこまでやらないならAIにすべて任せた方がお客様のためです。

通訳道場★横浜CATSはこちら

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カンパニーはなぜ会社?

カンパニーといえば会社、と思い浮かべます。

確かに14世紀にフランスでcompaingnieが会社という意味で使われていたという記録があります。

でも元の意味は意外。この忘年会シーズンにぴったりです。

company、2つの部分に分けられそうな気がしませんか?

分けるとしたら?…そう、comとpanyですよね。

comは「一緒に」でしょう?panyは…?

今朝召し上がった方もいらっしゃることでしょう。平日はお米でも週末の朝食はコレ、という方もいらっしゃるでしょうね。

そう、パンです。イタリアのパニーニって流行りましたね。パンをパンと呼ぶのはラテン語系(ポルトガルも)。ブレッド、ブロートと呼ぶのはゲルマン系。

さて、comとpanyを足してひとつにすると…「一緒にパンを食べる人」。仲間ってそういうことです。命をつなぐ食べ物をわかちあい共にする。それは志を共にしてこそ。

カンパニーを名乗る劇団が多いのも頷けます。

会社もそうありたいですね。酒の勢いでイヤな上司、同僚の悪口を言い合うのはcompanyではありません。くれぐれも感謝と慰労の忘年会をお楽しみください。

元の意味を知るこつは「細かく割ること」です。細かく割るとアルファベットの羅列だったものから映像が蘇ります。

細かく割るのは、武道の動きでも音楽でも語学でも同じですね。初心者が大きなひとかたまりと捉える単位を10にも100にも割っている。止まって見える。自由にできる。新しい単語を大量に覚え続ける通訳者に欠かせないセンスです。

語源で「細かく割る」をご自分で楽しんでいただくツール(ヒミツ)と解説本を創る企画があります。参加者(無料、中学生以上)のみなさんにツールで遊んでいただき、私がご質問に応えて語り下ろします。

ご関心おありの方はお問合せからご連絡ください。日時、場所決まり次第ご連絡します。

お問合せ

 

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海外の友達に「なんで日本語は文字が3種類も?!」と訊かれたら

フランス人の画家さんが真剣な顔で言いました。

「『消しゴム』って見たときはショックだった。こんなの無理と思った。」

「???」

「三種類も混ぜて使うなんてどうかしてる。日本語の文字ってどうなってるの!」

皆さんも海外のご友人から日本語の書き方、orthography正書法に関する質問、あるいは苦情を受けたことはありませんか。

漢字は意味を表し、仮名は音を表す…こんな説明では「アルファベットみたいに表音だけでいいじゃん!」と言われてしまいます。

私はこんな風にしています。(カタカムナ、手話のことは今回は別にします)

言語はもともと音声。文字のない言語はあっても音声のない言語はない。日本語はもともと文字がなかった。

だから漢字を借りてきた。漢字はひとつで魚、草、のように意味も音ももつ。でも日本語は文字がないんだから音を表す記号としても漢字を使わなくてはならない。

そこで音を表すレギュラーメンバーに決まったのがこちら。(ほかにもありますが、お友達のためにKeep It Silly and Simple)
これ、イギリスでスロヴァキア出身の友人のために書いたもの。ファイルが日本ぽくありません。

これを漢字の全体を簡略化したのがひらがな(写真中)。1000年以上前に官僚が使った形跡があるそう。送り仮名(消しゴムの「し」)や内容語どうしの関係を示す機能語をしるすのに使います。

カタカナは漢字の一部を抜き出したもの(写真下)。ひらがなより前に学僧が漢籍を読むときのメモに使っていたそうな。外来語(消しゴムの「ゴム」)はもっぱらカタカナで記します。

ひらがなを覚えるのに苦労する子も漢字はすらすら覚えられたりします。想像力を働かせやすいし、覚えがいがあるのでしょうね。学校の勉強が楽しめない男の子が、お父さんの飲むお酒の名前「花春」をばっちり書いたのには感心しました。

Click here for English 英語はこちら

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クリスマスの悲しみ―コヴェントリ・カロル

今週末のキャロリングに選んだ2曲目はコヴェントリ・カロル。
アイルランドのヴォーカル・グループ、ANUNAの声は美しい…けれど
なぜクリスマスにこんな悲しげな…? サンタさんもしょんぼりします。

いったいどうしたのでしょう。

昔々、テレビもYouTubeもなかったころ、クリスマスやイースターとなると町の人々が小さな山車を仕立てて聖書の場面を飾ったり、演じながら町を練り歩いた(ページェントPageantという)ものです。

聖書の場面ですからクリスマスツリーもプレゼントもディナーもまだ影も形もありません。

聖書が描くのは王とはかけ離れたイエスの誕生とエジプトへの逃避行。イエスの誕生を天使に告げられた羊飼いたちはまっすぐベツレヘムの馬小屋にやってきます。ところが東方の賢者たちは星をたどり、賢いはずなのになぜかヘロデ王のもとに参上、「新たな王はどちらに」などと間抜けなことを訊いてしまうのです。ヘロデは「そんなこと聞いてない。こりゃアブナイ」となり幼児虐殺を命じます。イエスは両親に守られてエジプトに逃げますが、多くの少年が犠牲になったとされています。

このカロルはそのときの母親の思いを歌っています。起源は14世紀~16世紀と諸説幅がありますが、コヴェントリ(コーヴントリといったほうが音が近い)の町で演じられた「毛刈屋と仕立屋のページェント」に収録されています。なんだか村歌舞伎みたいですね。

(コヴェントリの大聖堂は第二次大戦中にドイツ軍に爆撃され大破しました。ところがその後司教が捧げた「Father Forgive」という祈りに復讐を望んでいた人たちも絶句することになります。これはまた別稿にて。)

さて、訳の語調はいろいろです。「めんこいややこ」「あねさまたちもなじょすっぺ」とやってみたのですが…それは現地ネイティブにおまかせします。ネット上にも和訳がいろいろありますが、言葉を探しきるまえに別の耳障りのいい語で埋めてしまったケース、新聞調で子守歌カテゴリからずれているケースがありました。これはぎりぎりまでねばってみたつもりです。

楽譜と詩はキャロリング当日にお渡ししますからプリントアウトしなくて大丈夫ですよ。

実費以外は国境なき医師団に寄付します。

キャロリングお申し込みはこちら。


Coventry Carol (日本語は下)
Lully, lulla, thou little tiny Child,
By by, lully lullay, thou little tiny Child,
By, by, lully lullay

O sisters, too,
How may we do
For to preserve this day
This poor youngling,
For whom we do sing
By by, lully lullay?

Herod, the King, in his raging
Charged he hath this day
His men of might,
In his own sight,
All young children to slay

Then woe is me,
Poor Child, for thee
And ever morn and day,
For thy parting,
Neither say nor sing
By by, lully lullay!

ねんねこ、ちいさなおさな子よ
ねんねんころりよ、ちいさな子
ねんねんころりよ、おころりよ

姉さまたちも、
何としょう
この日いちにち守るには
このかわいそうな幼子を
この子のために私ら歌う
ねんねんころりよ、おころりよ

ヘロデの王さま、怒りにまみれ
この日命じた、
つわものどもに、
見える限りの
幼子殺せと

憂い哀しむこの私
哀れ幼子、おまえを思い
その旅立ちは
語りも歌もないままに
ねんねんころりよ、おころりよ

 

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