言語が変われば性格変わるというけれど

持続可能な未来のための通訳者 冠木友紀子です。

言語は人柄。話す言語によって性格が変わるそうで、こんな研究もあります。確かに英語がある程度身についてくると、こう言い人います。
「私、英語話すと性格変わるの。オープンでポジティブというか自己主張しやすいのよね。」
「そうなんだ…」
英語が苦手なお友達はそう相槌を打つのみ。

何度かこういう場面に出くわしました。そのたび、なんだかいやだなあ、と違和感を覚えました。

何がいやだったのでしょう?ううむ…たぶん…英語話せる人の口調に、「日本語しか話せないあなたが持っていないものを私は持ってるの」と言わんばかりのトーンを感じたのでしょう。そんなつもりじゃないかもしれませんが、英語が苦手な人の方は、そう言われたと感じたような顔つきでした。この図のように。

左は日本語のみ、右は日英バイリンガルさん。

私はこんな風に感じたことはありません。

そして、外国語を習得するとは上のような整数の「足し算」ではなく「割り算」、分数ではないかと思うのです。

ちょっと自分を振り返ってみます。

日本語を話していた子どもの頃から、相手によって自分の声や言葉が変わることが気になっていました。クラスのバカ男子と祖母に同じ話し方をするはずがありません。

言語そのものの違いというより、その言語を使う集団の影響を強く受けた気がします。

英語を習いたての頃は、相手に合わせる、相手の声の個性を聞く余裕なんかありません。誰に対しても同じ話し方でした。

それが、考える前にしゃべってる状態になると、細かく割れてきて…めそめそしがちなインド人の友人の泣き言につき合う時と、押しの強いユダヤ人の先生と議論するときは同じ英語でもまるで気分、態度、言葉遣いが違いました。

まだドイツ語でのご縁は少ないので、このくらい。

外国語を学んで、人の持たない何かを持った気になるとしたら…なんだかちょっと私には違うと思うのです。

足し算ではなく細かく割れてくる。

そのほうが言語中枢の分化などの神経科学にも合うように思います。

足し算発想は直線的経済成長モデルと通じませんか?割り算の方が自由、和に通じるように思います。

私が外国語、文学の達人と尊敬する方々は日本語にも外国語にも感覚が細やかで人に優しく、地に足の着いた方たちです。私もそうありたいのですが!

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字幕なしで英語映画を見るには

こんにちは。持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

字幕なしで映画が見たいという皆さん。日本語の字幕を読みながら英語聞いてませんか?それじゃいつまで無理。聴覚と視覚の科学から見て無理です。

次の順が理に適っていておススメ。近道でも遠回りでもありません。時間はちょっとかかるので短いビデオでどうぞ。

①先に日本語字幕だけ読んで「イメージ化」する。お耳がお留守になっても気にしない。
②英語字幕にして読む。お耳がお留守になってもまだ気にしない。
③英語字幕を読みながら、聴き取ろうとする。
④再生速度を1.5-2倍にして、2分くらい(人によるけど)聴く。わけわからなくてOK.
⑤いつもの速度で再生。びっくりするほど聴き取れます。

めんどくさい?手間惜しみは己に負ける遠回り。外国語学習は心の道です。

私はドイツ語での通訳に備えて、英語字幕とドイツ語音声で上の方法を実践しています。英語でもドイツ語でも

下のビデオはスーフィーのとんち話の人気者、ナスルディンのお話です。②から始められる方は英語字幕を出してごらんください。日本語字幕は自動翻訳でちょっと変ですが、歯車印で自動翻訳を日本語にすれば出てきます。まあ、お手元にお気に入りのDVDがあれば、そちらでどうぞ。

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福島の中高生を地元密着通訳ボランティアに

新型コロナによる急な休校。中高生の皆さんびっくりですね。
そこで中高生限定無料オンライン通訳道場を7回分用意しました。そもそも少人数ですが、その半数を福島県枠にしています。

なぜ?

福島での通訳は福島地元の言葉が話せる人がいい。地元の人がいつも通りに自然に話せるよう、通訳も地元の言葉で話せるといいのです。

地元の言葉は免疫でもあります。

実はこんなことがありました。

震災後、身内の用事で浜通りに出かけたときのこと。

ドイツ人らしいジャーナリストの方が日本人通訳をつれて地元の人に英語でインタビューをしています。盗み聞きするつもりはなかったのですが、気になる。

相馬中村神社の狛犬 2011年7月 相馬野馬追にて

ジャーナリスト「Do you think people still stay here because they cannot evacuate?」
通訳「 ここに残っている人たちは避難できない人たちだと思いますか?」
地元のおじさん「あー、そういう人もいっがもわがんないです。」(微妙に丁寧)
通訳「Yes, I think that’s right.」

ええええー!それじゃ「そういうことだと思います」になっちゃう。

地元の人が緊張しているのは明らかでした。通訳をしていた若い女性の日本語は標準語、英語はアメリカ英語。通訳養成を経ていない自己流であるのも明らかでした。

これか…

私にも福島に取材に行きたいという海外ジャーナリストからの通訳打診が頻繁に来ていました。条件は「実費以外は無償ボランティアで。プロでなくていい。英語が話せればいい。」

それって、通訳者にも福島にも失礼でしょう。そう言って断りました。

ああ、これなのか…

暫くするとドイツ在住の友人がFBで「福島に住んでいる人たちは本当は避難したいけれどできない人たちだ。福島は住むところではない」というドイツの記事をシェアしているのを見かけました。

あのとき見かけたドイツ人かどうかはわかりませんが。

友人は「日本にいると日本のことがわからないでしょう」のようなコメントもつけていました。

ご立派なドイツからのありがたいご託宣、と日本在住の友人たちも浮き足だったのです。

何度バカにされたら気が済む?日本辺境コンプレックスここに極まれり。どいつもこいつも本当にバカか?

以来、私は福島の免疫として中高生に地元密着ボランティアになってほしいと願ってきました。

新型コロナウィルスによる休校を機会として活かします。

福島のみんな、来らっせ!(いや、みんな来たら困るんだけんじょも)

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厚生労働省の英語ページが??な本当の理由

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

先週末のこと「厚労省の英語がひどい」と、SNSの友人たちが次々と投稿していました。機械翻訳はこんなものだ、やはり人力翻訳でなければ、というよくあるちょっと残念な主張もあれば、自力で日英訳しなおしている、という方もありました。

私はすぐにピンときました。手がふさがっていてすぐにチェックできなかったのですが。

厚労省サイトの日本語が問題なのです。

多くの人が誤解、混乱なく読めるようになっているとは言えないのではないでしょうか。これを自動翻訳に入れたら、そのわかりにくさが増幅されます。自動翻訳がダメなのではありません。入力する日本語が不適切なのです。だからといってはじめから人力翻訳のみ頼りにしてはお金と時間がかかるばかりです。

今日では厚労省もメディアでの批判を経て、多少改善したようです。

そこで、日英訳にプロを頼むほどではない、という場合、グーグル翻訳をうまく使うヒントをご紹介しますね。

①「てにをは」格助詞を省略しない。
②主語、述語を明示する。(ねじれているのはもってのほか)
③「主語+述語」の組み合わせをつなげるのは2つまで。間に接続詞を使う。
(「が」は多用途なので、しかし、そして、などのほうがよい)
④羅列は箇条書きにする。

これを実際にやってみます。厚労省サイトにはこんな文があります。1文で1段落です!主語、述語がどれかわかりにくい!分詞構文だらけのような日本語です。

乗員については、ほぼすべてに対して講習を行い、症状がない状態で勤務中の乗員に対しても、業務中は必ずマスクと手袋を着用する、手指をアルコール消毒する手指衛生を行う、食事を離れてとる、船内の乗員の各居室への消毒用アルコールの設置など衛生環境の整備を行うことなどを徹底してきました。

これをグーグル先生に放り込むとこうなります。(厚労省のサイトにはこの文章はありません)

Training is provided for almost all occupants, and for occupants who are working without symptoms, be sure to wear masks and gloves during work, perform hand hygiene by disinfecting hands with alcohol, and eat meals. Thorough efforts have been made to maintain a sanitary environment, such as by installing disinfecting alcohol in the occupants’ cabin away from the ship.

読んでいるうちに息が止まりません?人の息をとめる文章はよろしくありません。しかもこの呼吸器感染症の時期に!

日本語を手直ししてみます。

乗員対象の講習
講習はほぼすべての乗員に行いました。以下の指示が乗員のなかで症状がなく勤務中である者にはなされています。
・業務中は常にマスクと手袋を着用すること
・手指をアルコール消毒すること
・食事は他者から離れてとること
また、衛生環境を整備するために船内の乗員の各居室に消毒用アルコールを設置しています。以上を徹底して行っています。

これをGOOGLE先生にお願いすると…

Crew training
The training was provided to almost all crew members. The following instructions have been given to the crew who are on duty and have no symptoms.
・Always wear masks and gloves during work
・Alcohol disinfection of fingers
・Eat food away from others
In order to maintain a sanitary environment, rubbing alcohol is installed in each crew’s room on board.We are doing the above thoroughly.

これに細かい仕上げ手直しをすれば十分用が足りるでしょう?

自動翻訳不信も、人力翻訳過信も時代遅れです。よい道具と自分の頭をうまく使って、時間を大切したいものです。

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子のプロフィール

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ミリアム・ウェブスター社が選ぶ,アメリカ2019年の一言:ジェンダーフリーの”they”?!

いやあ、流行語大賞で「ONE TEAM」「タピる」などなど聞いて「あ~、そうかもそうかも。ずいぶん聞いたもんね。」なんてのんきに思っていたら、あらま、アメリカでは…

「今年の言葉」を選ぶのは辞書の名門、ミリアム・ウェブスター社。今年はtheyが選ばれたとか。

they?

なんでも、これは7月半ばにバークリー市の決定を反映してのこと。リベラルな取り組みで知られるバークリー市では市の公文書でshe, heを使わない、というのです。これらはジェンダーニュートラルではないのでよろしくないそうで。代わりに複数形のtheyを使うそう。バークリー市の文書はこちら。

そして、文脈からしてひとりであることが自明な場合も動詞はareなどもとの複数形用を使うとか。

わあ、たいへんだ。こんがらがりそう!

そもそも英語は人を指す中性の三人称単数代名詞がありません。それでeveryoneの代名詞としてtheyでもよろし、のような苦肉の借り物を600年以上続けてきたとされます。

今回はtheyの出番がまたひとつ広がった、とも言えます。

逆にmanhole, manpowerなどはお払い箱。maintainance hole, work force などにとって代わられます。スーパーマンや電線マンはどうなるのでしょうか…

ここでふと気になったのがドイツ語の代名詞のこと。英語とドイツ語は茨城弁と栃木弁くらい似ていますが、あれ…?主格だけ比べてもだいぶ違う…!

主格単数複数
1人称ich (I)wir (we)
2人称親 du (thou)
尊 Sie (you)
親 ihr (you)
尊 Sie (you)
3人称sie (she)
er (he)
es (it)
sie (they)

バークリーで議論になったtheyに相当する語は 古高地ドイツ語由来 sieで、これは三人称単数女性代名詞と同じ。発音だけなら2人称尊称単数・複数とも一緒です。

ドイツで同じ議論が起きたら…「sie やerはジェンダーニュートラルじゃありませんからね、複数形の sieを使います!」

え…?!

もうわけがわかりません。

それにしても人称代名詞の分かれ方は不思議です。話し相手=2人称は男女ではなく、親しいか、そうでないかが決め手で2とおり。話し相手でも自分でもない3人称はジェンダーが決め手でニュートラルもあって3とおり。

いったいどんな世界観を反映しているのか思い巡らすと止まりません!

言語の構造は哲学。

2020年1月13日「春と修羅・序」をパトリック先生と読み解き、諏訪先生の賢吾造形で語る特別な一日ワークショップ

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いったいどうなる?2020年大学入試、民間英語試験導入。

2020年大学入試、民間英語試験導入のはずが、 高校生にも、高校の校長先生にも延期を望まれるという異常事態。

実は10年ほど前、大学入試センターの通訳をしていたことがあります。

その頃、政治主導で共通テストの複数回化が唱えられていました。けれどセンターの現場、専門家には根強い疑問が。「たった1回のセンター試験で出されるたった1問を作るのに数百問を検討して、年1回の試験にやっと間に合わせているのに、どうして何回もできるものか!」ある先生は「床屋談義もいいかげんにしろ」と呆れていたほどです。

それで、民間試験。

もう、やめちゃえ!

民間英語試験を?

いえいえ、入試英語そのものを。私は外国語を入試科目にすること自体反対です。

皆さん、思い出してみてください。

ピアノでもギターでも茶道でも、なにがしか身についたとき、それに夢中だったのではありませんか?恋愛状態だったのでは?だから、多少の困難、苦労も乗り越えられたのでしょう?

恋愛は個別のものです。

他人から見たら野暮ったいブ男でも、夢中になっている本人には世界のすべて。他人にとっては平凡でも本人には特別。

外国語の学びも似ています。

ドイツ語に夢中になる人もいれば、あんなカタイのはいやだ、という人もいる。イタリア語と恋に落ちる人もいれば、あんなに明るいのはついていけない、という人もいる。

英語の楽しさを伝えたい、というハシャイだ先生が多いのも困ったもの。イタリア語のほうが楽しいかもよ。律儀な人にはドイツ語の方が楽しいかもよ。

英語を全員で好きになるなんて気持ち悪い。

全員で英語を学ぶのが無理なのです。全員でやらなくていいのです。

できないと困る?そんなことありません。
困りそうになったら人間本気出します。間に合います。
台所の消火器じゃないんだから、わけもなく用意しておく必要はありません。

多くの教科書に見られる、地域色を薄めた「国際語」としての「英語」にはもともとの言語の色気がありません。

さて、どうするか。

中高生諸君、他の外国語に浮気しなさい。自分だけの恋人を見つけなさい。

学校の英語の先生には、実は大学の専門はモンゴル、トルコ、中国と別の外国語だった方も少なくありません。ぜひ、そのお話をきいてみてください。先生の目の色、きっとかわるよ。

中国、フランス、インドネシア、いまはネットでいくらでも聴けます。たとえばこれはフランスのテレビ。

これ好き!と思えるのをイチからこっそり学んだら、学校の英語がラクに思えます。 私も中3のとき、友達とドイツ語学習会をはじめました。すぐ頓挫しましたが、後悔はしていません。

ドイツ語祭り続行中!持続可能な社会のための通訳者 冠木友紀子のプロフィール

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脱!読みにくい翻訳「A above B」 は「Bの上のA」?

「above~」=「~の上に」
まずはそう習います。導入としてはわかりやすい。間違いでもありません。

では、これを日本語に訳してみてください。 「クワイ河収容所」冒頭、主人公がまどろみながら故郷の 海辺の景色を夢見るシーンです。

I heard the raucous cry of sea-gulls circling above the fishing-boats as the fishermen sorted their catch.

北ウェールズの海辺

ありがちなのは…「私は漁師が獲物をより分けている漁船の上に円を描く鷗たちのしわがれた鳴き声を聞いた。」

だめだこりゃ。
ビデオカメラでこの訳の通りにこのシーンを録ってみてください。変でしょう。イメージの順も、感覚体験の順も台無しです。

ICUの齋藤和明先生はこう訳しておいでです。
「大空にはかもめが数羽旋回していた。咽喉をつぶしたような鳴き声が聞こえていた。下の方では漁船の漁夫たちが獲物を選り分けていた。」

aboveを「~の上に」なんてしていないでしょう?こうすると視線の流れが自然でしょう?

ただ、毎朝鳥の声で目を覚ましているイナカッペの私としては、「聞こえた」が先で、鳴き声の方向に目をやると「見えた」になるのでは、と思います。ウグイスなんかなかなか見えませんけど。 英文もそういう順で描写しています。

「耳に入ってきたのは鷗のしわがれた鳴き声だった。旋回する鷗たちの下方では、漁船で漁夫たちが獲物を選り分けていた。」

お粗末様でございました。

語の意味を1対1対応で覚えるのは、自転車で言えば補助輪のようなもの。次の段階があります。いつまでも1対1にとどまっていると広い文脈で身動きがとれなくなります。文脈の流れを追えなくなります。作者の心の中の風景、視線の動きを辿り、予測することができなくなります。

読みにくい翻訳はだいたいこの英文解釈の延長タイプ。間違っていない、これしか方法はない、日本語と英語は語順が違うのだ、と問題を自分から遠ざけがちです。

これではかつての機械翻訳と大して変わりません。

さて、ではどうしたら? 次稿をお楽しみに。

通訳道場★横浜CATS メンバー限定朝活絶好調!

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横浜で明治の花嫁が書いた英詩

これまで2回にわたり、幕末、明治の横浜ではまさに諸国(日本国内、海外両方)のひとたちが入りまじっていたこと、ことばはナショナルなものではなく、目の前で話している「ひと」と結びついていたことをご紹介しました。ナショナルなきまりがなければ、どんどんまじりあっていくのもうなづけます。

でも、ちょっと事情の違う空間もありました。キリスト教の宣教師たちが開いた女学校です。こうした学校ではアメリカから教科書を取り寄せ、アメリカの学校のような教育がなされていました。ヘボン医師の施療所を借りて女子に授業を行っていたメアリ・エディ・キダーは本国宛ての手紙にこう書いています。

「…現在女性と12名です。そのうち7名は14歳から17歳まで、残りの5人は8歳から10才ですが、とても小柄なので、アメリカの5,6歳の子供のようにみえます。
 少女たちはみな利発で、理解が早く、アルファベットの大文字、小文字を覚えるのに三朝以上かかった子はなく、1人は第1日目に全部覚えてしまいました。」(榎本義子訳「キダーの手紙」より)

おおお、なかなかやります。

キダーさんの熱心な教え方が評判を呼び、「キダーさんの学校」の生徒数は増え続けます。やがて、寄宿舎を備えた立派な校舎を建てるまでになりました。このとき建築費を寄付したアメリカの教会の総主事の、フェリスさんの名をとってこの学校はフェリス・セミナリーと名づけられました。

この学校では毎日午前はアメリカから取り寄せた教科書で地理、歴史、生物、数学…すべて英語「で」学び、午後は日本人の先生から和文学、漢籍など習ったそう。プレゼンを重視した教育で、スピーチ、朗唱、意見発表の機会にあふれていました。

そんなフェリスの卒業生第1号は会津出身の若松賤子。短い生涯でしたが
「小公子」をはじめ 膨大な翻訳を残しています。賤子が戊辰戦争で一家離散したのち横浜の生糸商の養女になる経緯は諸説ありますが…8歳から18歳まで、3年のブランクを挟んで在学した賤子は、結婚にあたって夫となる巌本善治にこんな英詩を贈って(つきつけて?!)います。(後ろに日本語訳あり)「結婚は男性が女性を自分の持ち物のように得ると思ったら大間違い!私をモノみたいに得た、と言わないでよ!」と言い切っています。また、「あなたが成長をとめたら、私は離れますから」と「永久就職」とは無縁の境地です。
(後ろに日本語訳あり)

1
We are married, they say, and you think you have won me,
Well, thake this white veil and look on me;
Here’s matter to vex you and matter to grieve you,
Here’s doubt to distrust you and faith to believe you.
I am all, as you see, common earth and common dew,
Be weary to would me to roses, not rue!
Ah! shake out the filmy thing, fold after fold,
And see if you have me to keep and to hold,
Look close on my heart, see the worst of its shining.
It is not yours to-day for the yesterday’s winning,
The past is not mine. I am too proud to borrow.
You must grow to new heights if I love you tomorrow.

2
We’re married! O, pray tat our love do not fail!
I have wings flattened down, and hid under my veil,
They are subtle as light, you can undo them,
And swift in their flight, you can never pursue them.
And spite of all clasping, and spite of all bands,
I can slip like a shadow, a dream. from your hands.

3
Nay, call me not curel and fear not to take me.
I am yours for my life-time to be what you make me.
To wear my white veil for a sign or a cover,
As you shall be proven my lord, or my lover;
A cover for peace that is dead, or a token
Of bliss that can never be written or spoken.
(「女学雑誌」明治22年7月)

いやあ、恐れ入り谷の鬼子母神。これは巌本善治自身も訳せなかったようで、乗杉タツさんが随分後になって訳しています。


我ら結婚せりとひとは云う
また君はわれを得たりと思う
然らば、この白きベールをとりて
とくとわれを見給え
見給え、きみを悩ます問題を
またきみを欺かす事柄を
見給え、君を怪しむ疑い心を
またきみを信ずる信頼を
見たもう如く、われはただ、ありふれし土
ありふれし露なるのみ
われを薔薇に造型せんとて
疲れて悔い給うなよ
ああ、このうすものを
くまなくうちふるいて
われとそいとぐべきや 見給え
わが心をとくと見給え
その輝きの最も悪しきところを見給え
昨日君が得られしものは
今日はきみのものならず
過去はわれのものならず
割れは誇り高くして 借り物を身につけず
君に新たに高くなり給いてよ
若しわれ、明日きみを愛さんがためには


われはは結婚せり、おお 願わくは
われらの愛の冷めぬことを
われにたためる翼あり
ベールの下にかくされて
光のごとくさとくして
きみにひろげる力あり
その飛ぶ時は速くして
君は追い行くことを得ず
またいかに捕えんとしても
しらなんとしても 影の如く 夢の如く
きみの手より抜け出づる力をわれは持つ


いなとよ われを酷と言い給うな
われを取るを恐れた給うな
生ある限り われはきみのものなり
きみの思うがままの者ならん
結婚のしるしとして 覆いとして
わが白きベールをまとわん
きみはわが主
愛しき日となることをあかしせんがため
そは消え去りし平和を覆うもの
また筆舌に表せぬ恵みのしるしなり

これまた日本語も大変なもので…

賤子が自分の心を表現しようとすると、どうしても英語が出てきたようです。「小公子」は、日本語でも心を表現しようと模索した末に生まれた名訳だったのですね。

なんだか今日は長くなってしまいました。次回は「経済」「野球」などおなじみの言葉の誕生を取り上げてみましょうか。

こちらも名訳「クワイ河収容所」英日読書会始めます

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通訳の先生がおススメ、中高生の参考書選び

市川学園といえば屈指の進学校。しかも、ここ数年自由で新しい取り組みが目白押しです。私も通訳養成や英語落語のワークショップを開いています。

先日、学園で立川志の春さんをお招きして念願の落語会が開かれました。これに合わせて校長先生が昨年の英語落語のメンバーを集めて再会の機会を作ってくださいました。

高3のYさん。なんだか静か。
「参考書や問題集ってどんなふうに選んだらいいんですか。」

狭き門より

思わずこう応えていました。
「これを書いた人に会いたいな、とあなたが思えるものがいいんじゃない?」

そんな選び方甘い?

いいえ、そんなことはありません。先生のおすすめやライバルが使っているもの、「〇〇大学合格一直線!」のような煽りぽいものに飛びつくのはカンタン。2、3冊ちらっと見れば買えてしまう。

でも、「この人に会いたい」と思える人に出会うのは意外と大変ですよ。書店の本棚ひっくり返すくらい手に取ることになる。でも、リアル書店はそのためにあるんでしょうけどね。

「手を動かし、心で感じる」ことをいつも大切にしてほしい。あなたの答えはあなたの手と心が知っているから。

“狭き門より入れ。滅びに至る門は広く大きい”-マタイによる福音書7章13節

持続可能な医療・農業・教育のための通訳者―冠木友紀子のプロフィール

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気の毒なイヌノフグリにすてきな学名

幼いころから祖母、母と野山を歩いて育った私は、山野草の名前を知るのが楽しみでした。なかには日本と海外ではまるで違う意味の名前がついていて、視点の違いに驚くこともあります。ついつい誰かに話したくなります。

我ながら日本側の視点が「?」だったのがオオイヌノフグリ。初めて国語辞典なるものを手にし、オオイヌノフグリを引いたときの衝撃は忘れられません。どうしてあの愛らしい花がそう見えるのかびっくりしました。股間を凝視されていぶかしげに振り返る愛犬の顔も忘れられません。彼は小型犬でしたが。

まさか、海外でもそんな…

ええ、まさかdog testicleなんかじゃありません。

オオイヌノフグリはBuxbaum Speedwellのようです。Speedwellの語源は、speedのゲルマン祖語で「栄える、成功する」、wellは「十分に、たっぷりと」ですから、あっという間に繁茂する様子にぴったりです。

昔の人たちが、私たちと似たような景色を見ていたことを言葉で辿れるってちょっと面白いと思いませんか?

さて、このspeedwellのみなさんをまとめてveronica属といいます。このヴェロニカは、イエス・キリストが哀しみの道を十字架を背負ってゴルゴダに向かっていたときに、顔に流れる汗と血をぬぐう布を差し出したあのヴェロニカと言われています。(ジョルジュ・ルオーの絵、「聖骸布」が有名ですね。)

道端の野次馬群衆がイエスに罵り声をあげる中、手ぬぐいを差し出すのは真心ぶれない人ではないでしょうか。ヴェロニカ属の花ことばはfidelity「信」「まこと」「忠誠」「貞節」などです。

ヴェロニカ、信が「犬の…」とは。

こちらの写真は拙宅の庭に咲いているイヌノフグリ(花は赤紫)とタチイヌノフグリです。なんでもこれらのほうが日本には多かったのに、明治以降オオイヌノフグリが海外から入って来て優勢になったそう。

昨年来、芝生の「雑草とり」を極力やめて、5センチ刈りにしました。むろん除草剤は使いません。そうしたら、こんなふうに昔、野原で見かけた小さくて丈夫な草花が顔を出すようになりました。

道端でイヌフグリを見かけたら、Speedwell, Veronica, Fidelityを思い出してくださいまし。

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