千葉の〇〇学園、面白すぎます。

こんにちは。通訳藝術道場の冠木友紀子です。

千葉の○○学園…この学校名をきいたら、皆さん「え、あのすごく勉強する学校でしょ」と思うことでしょう。

まあ、それもそうなんですが、それだけでもないんです。

学外からいろんな大人を招いて、土曜講演会やゼミを開いたり、生徒が学外で発表して受賞したり。とにかく風通しがいいんです。

私も某「出前授業チーム」に招いていただいたのがきっかけで、この学校にご縁ができました。今は思いっきりわがままに楽しんでいます(経緯は割愛)。

夏の3日間朝から晩までのワークショップで1学期分ゼミを担当したとみなしてくださるのですから、自由です。ありがたい。(毎週90分のゼミに横浜から千葉に通うのは大変すぎます。)

今年も3日間、あっという間に過ぎました。そして、高校生の素晴らしいストーリーテリングに感服しました。

何をやっていたかというと…英語で話芸です。

正直、初日は焦りました。

だって、大喜利なんか朝飯前。立川志の輔さんの有名な小噺「ハイジャック」のオチもみんな見事に当てちゃうし…。

(ハイジャック概略:「おい、この飛行機はハイジャックした。おとなしく言うことを聴け。メキシコへ行け。」「バカか」「なんだと!メキシコへ行け」「〇〇〇〇」←ここを創作)

2日分のお話の素材が1日で尽きてしまう!小噺を増やしてもなんだか退屈だし、落語は一朝一夕では嘘くさいし…

ここで生徒諸君に相談すると、物語をアレンジして語ってみたい、という声が。

そこで「ロバを売りに行く親子」を提案しました。Doorways to the Soulに収録されている英語版です。

selective focus photography of gray donkey eating grass
Photo by Felix Mittermeier on Pexels.com

先刻ご承知かもしれませんが…ロバを売りたい親子はいまいち自信がなく、市場に着くまでにいろいろな人々の無責任な助言に翻弄され、ロバには逃げられるというお話です。

まず私が語り、少しずつ生徒諸君に語りに参加してもらい、だいたい渡せたところで今度は登場人物気分グラフ。少人数グループで気分グラフを互いに見せ合うことで、知らないうちに物語を語ることになります。

その後、インタビューもしました。登場人物(ロバ含む)役とマスコミ役にわかれてロールプレイです。ロバ役の男子生徒君、最高でした。少しの単語でも使い方次第で大爆笑になるんです!いい味出してました。

さて、ここで新たなミッション。「ハッピーエンドにお話を変える。」

どのアイデアも素晴らしかったのですが、これには皆一瞬静まりかえりました。

簡単に日本語で書きますと…

「市場に着くと、ロバコレクターのお金持ちから引き合いがありました。けれど突然、ロバが涙を流し悲しい鳴き声をあげはじめたのです。広場の隅のおんぼろ動物園に、赤ん坊のころ別れたお父さんロバを見つけたからです。ひとりぼっちになったお父さんはいっそう老けて見えました。農夫はロバが親子水入らずで暮らせるよう動物園にロバを寄付しようと決意します。周りの人たちは金持ちにロバを売れ、金持ちが寄付すればいい、と忠告します。今度ばかりは農夫も毅然と答えました。「寄付したいのは私の意志だ。売ってお金をもらったら、あとは買い主の思うままだ。お金をもらうより、いまは意志を実行したい。」人々は恥じ入り、感激しました。めいめい農夫に贈りものを持ち寄りました。おかげで農夫の奥さんも喜んだとさ。」

これを思いついた高校生は、2日間でこの部分だけでなく冒頭から全部英語で覚え、みんなの前で語ったのです。みんなも英語のうまいへた、正しい、間違っている、というものさしから自由になって、心できいていました。

心で生み出すものは心にしみいる。心のスイッチが入ると、頭だけで覚えられる限界の何倍ものことばが、あっというまに身につく。

そんなことを、みんな身をもって示してくれました。

この学校には9月初めに立川志の春さんが2回目のご登場です。もちろん行きますとも。

伝説の検定外教科書プログレス旧版で通訳養成の準備…のはずが、「育ちのよい英語」を教えられる先生が育っています。→英語の土台徹底リノベ講座

Please follow and like us:
error

文学が聞きにくい通訳を救う

zoom朝活通訳修行も好調です。今日はピーター・マクミランさんの百人一首の英訳が話題になりました。

このごろは、文学なんて大学の役立たず、高校でも必修から外すべし、などという声が聞こえますが、とんでもない。

文学とがっぷり四つに組むって大変な冒険、能動的な体験です。

のんびり英文学作品を日本語訳で読み、登場人物の気持ちを推し量る、精神分析をもてあそぶことなどではありません。(そんなことばっかりしてるから役立たず、って言われちゃうんです。)

例えば英詩を日本語の「詩」に訳す、日本語の俳句を英語「俳句」にしてみる。

ちょっとお手伝いしているフェリス女学院の同僚にも、アメリカ出身で、日本語で短歌づくりを楽しむ人がいます。さて、日本の英米文学科の学生で英詩を作ったことのある人はどれくらいいるのでしょう?

詩を詩に訳すには途方もないエネルギーがいります。詩を書くより大変かもしれません。時間をかけ、頭をひねり、多くの選択肢から1つを選び、それでもなお完璧だとは思えません。

時間に追われがちな通訳者の皆さんにも、ひとりでいられるお休みの日に、じっくり詩と取り組むことをおすすめします。豊かな時間となるはずです。

いや、それはちょっと無理…というなら、毎日一首、一句、一篇でよいので、英語、日本語で韻文作品を音読することをおすすめします。

なぜなら、通訳者にありがちな「聞きにくさ」「通訳口調」改善に効果抜群だからです。

通訳者の「聞きにくさ」の原因は、往々にして余分な「埋め草あぶく言葉」です。「えー、それといいますのも、つまり、しかしながらですね」聞かされる方はたまったものではありません。

これをやめよう、と意識すると逆効果。そんなことは意識せず、よいお手本に耳と口を慣らした方がうまくいきます。

私はドナルド・キーンさんの説明的でなく、余分な語がまったくない訳が好きです。

閑さや     Such stillness-
岩にしみ入る The cries of the cicadas
蝉の声 Sink into the rocks.

万葉集から江戸時代の漢詩までを網羅したドナルド・キーンさんの素晴らしいアンソロジー

もちろん、文学だけで通訳養成は不可能です。それについては別稿にて。

訳した感ゼロ、話芸としての通訳者 冠木友紀子のプロフィール

Please follow and like us:
error