オバマ大統領広島演説⑪-わかるってどういうこと?

ぬか漬けと味噌汁じゃなくてトーストとバター

ラスト2回となりました。えんえん続けたあげく、ふと思い浮かぶのはとてもシンプルなこと。「わかるって映像が湧きあがること」。聴いてもさっぱり絵が浮かばない通訳を「通訳だから仕方ない」とあきらめることはありません。しっかり聴けば通訳者の頭の中に精確な絵が浮かぶ。その絵を語ればよいのです。一語一語、訳語の根拠を原語の表現で理由付けできることが必須条件ですが。「ニュアンス」「言わんとすること」といったひとりよがりになりがちな指標(もどき)とはちがいます。カメラのパラメーターに似ています。

このくだり、さすがです。政治学的な平和の定義なんかしても何も動かない、残らない。オバマ大統領は誰もが思い浮かべられる日常の風景を次々と聴き手に思い起こさせ、平和の印象をしっかり残します。これはリンカーン大統領のゲティスバーグ演説にはあまりない一面です。

The irreducible worth of every person, the insistence that every life is precious; the radical and necessary notion that we are part of a single human family -– that is the story that we all must tell.

That is why we come to Hiroshima.  So that we might think of people we love — the first smile from our children in the morning; the gentle touch from a spouse over the kitchen table; the comforting embrace of a parent –- we can think of those things and know that those same precious moments took place here seventy-one years ago.  Those who died -– they are like us.  Ordinary people understand this, I think. They do not want more war. They would rather that the wonders of science be focused on improving life, and not eliminating it.

私の中身は意外と日本のおじいちゃん。「食卓をはさむ無伴侶の~」のくだりは「黙って食え!」とちと赤面。でもなんだかトーストやバターの薫りがしてきました。ぬか漬けと味噌汁ではありませんねえ。

何度か録音しなおした盲点 this とthat

意外と手を焼いたのがthatです。勢いから「これが!」と言いたくなってしまうのです。でもthisではありません。thisは手をのばして触れられるマイ空間のなか。その外は宇宙の果てまでthat。オバマさんもthatで、「みんな、あれだよ!」と夜空の星を指すように共に目指す物語を示しておいでなのですね。

さて、次回でこの演説は最後です。もし「これをやってみて…!」という素材がありましたらお知らせください。

急に冷え込みました。どうぞ暖かくしてお元気で。

オンライン参加もOKです。
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子どもに「将来の夢」を職業で答えさせるのに違和感があるなら

小学校のクラス文集でよく見かける「将来の夢」。

弁護士…公務員…学校の先生。

職業で答えさせることに違和感を覚えたことはありませんか。

子どもたちが大人になるころ、保護者、先生の世代が知っている職業はもうなくなっているかもしれません。 

でも「ユーチューバー」なんて答えられると今度は大人がぽかんとしてしまう。

ご自身が子どもの頃はいかがでした?

私は幼稚園の頃に「ケーキ屋さん」「お花屋さん」と答えたのを覚えています。いや、答えそのものより違和感をはっきり覚えています。嘘じゃないけれど、なんか違う。我ながらガラじゃない。でも憧れの役者、歌手、武士なんて答えたらめんどうなことになりそう…。

ふと思い浮かんだのは、身近な「魔法使い」みたいな大人たち。

ケーキ屋さんすごい…どろんこみたいな生地があっという間にきれいなケーキに…。

お花屋さんすごい…お花って組み合わせで雰囲気ががらっと変わる。

自分でケーキを焼きたかったわけではありません。
お花を売りたかったわけではありません。

自分の手で変化を起こし、思いがけない新たな美しさを生み出す。そうして人に驚き、喜んでもらう仕事を素敵と思っていたのです。振り返ってみると、幼い憧れの中にいまの通訳につながるものを感じます。

子どもに「将来の職業」を訊くなら、「なぜ」をもう一歩掘り下げてみてはいかがでしょう。

子どもに「将来の自分の職業」を訊く代わりに「身近な魔法使いは誰?」を訊いてみてはいかがでしょう。

人間、生きていること自体すでに労働であるという考えもあります。

Carpe diem. Seize the day.
今を生きよ。

ママの気がかりお聞かせください。
安心・自信・希望をお持ち帰りいただきます。
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10日 子どもの英語が心配なママのための不安一掃セミナー

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翻訳を磨くのは英和辞典じゃなくて…

みなさん辞書お持ちですか?電子?紙?

あ、電子派が多そうですね。

もしかして家庭の医学やビジネス法律関係の資料も入っている…?

でも、これは入っていないでしょう。
久々に紙の辞書を買って大満足です。
三省堂の「現代語古語類語辞典」。

通訳道場メンバーの悦子さんが教えてくれました。
いいもの見つけましたね~!!ありがとうございます。

私もこういうものをいつも探しているんです。

なぜって…皆さん、私の通訳の日本語表現に驚いて下さる。

振り返れば、その根は中高時代なんです。 文系、理系なんてケチなこと考えずに何でも学んだ。 自然科学、社会科学の日本語に触れ続けた。毎朝歌う讃美歌は文語。

そんな体験を、損なうことなく別の形で通訳を学ぼうという大人の方たちと分かち合いたい。なぜなら、出会った人たちの中にすでにある賢さ、宝が喜ぶはずだから。

(こういうもんだから覚えろ、みたいなことを我慢してると子どもの頃はいきいきしていた知性が昏睡、機能不全になるのです。)

この辞書は現代語が見出しになっていて、その見出し語の表現を上代から辿っています。日本語版超プチOEDのよう。 北欧の2つの昔話をハイブリッドにしたストーリーテリングの訳にも助かりました。

たとえば王子が馬で冒険の旅を始めて…
The prince rode for a long time, he rode for a longer time.

「王子は長い時間馬に乗った。彼はさらに長い時間乗った。」

学校の英文和訳ではこんなもんでもよしとすることがありますが、ダメですね。単語を単語に置き換えただけでなんの情景も見えません。

情景が見えない、というのは原文にあった文体のカテゴリが、日本語では失われたということです。

王子と馬が登場する情景を描くにはそれにふさわしいカテゴリの日本語が必要。

さて、程度を表すとき英語は時間(例 longer time)、日本語は空間(例「はるばる」)で表すことがままあります。あらいぐまラスカルの歌でも「ロックリバーへ遠乗りしよう」というフレーズがあります。でも、できれば「時間」で表したい。遠乗りじゃなくて「長乗り」、聞いたことあるけど、ほんとにあるかしら。

「馬」でひいてみると…ありました! さて、実際のストーリー訳がどうなっているかは近日発売CDブックをお楽しみに。

プロフィール

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ストーリーテリング通訳―できるかできないか考える前にやってみた

友達に思いがけないことを頼まれた?できるかできないかわからない?
そんなこと考える暇があったらやってみなさいな。結果がどうであれ大丈夫。

お友達が頼んできたのならなおさら!

自分では「なんじゃそれ?」と思うことも、すでにその友達には「君ならできる」が見えている。ここでグダグダいうのはただの保身。

私にはストーリーテリングの通訳がまさにそうでした。

写真のCDジャケットに写っている男性はストーリーテラーのニックさん。5年前の秋のこと、福島まで運転手をつとめ、ほっとしてあくび連発の私にニックさんが言ったのです。それも珍しく深刻な顔で。

「ユキコ、今日から君がいるときは必ず僕の通訳をしてほしい。僕はひとことひとこと大事にしたい。『英語がそんなにわからなくても雰囲気で充分』なんていう人もいるけど、そうは思えない。本当は英語がわからない、話が見えてない人たちをそのままにして語り続けるのはいやなんだよ。だから頼む。」

うん。わかった。(昨日の那須与一より私は単純。)

やってみました。できました。得意です。

ストーリーテリングの通訳をしたからこそ、一般的な通訳観にはない2つの要素を洗い出せました。

なつかしいチャレンジをありがたく思い出しています。

そして、もっとたくさんの方々にストーリーテリングを届けたいと願っています。そのために…まもなくリリースする歌詞カードもテキストもないCD(!!)に訳詩をつけています。

自然に太宰みたいな手法になってきました。

編集者が口述筆記したはずの作品。なぜか草稿が見つかったそうで。一度書いて、それを暗誦し、語りに耐えうるかどうか確かめ、編集者には隠して初めて語るようなふりをしていたということ。つまり、言葉を声で身体に通したということ。

ニックさんたちに似つかわしい方法です。

CDリリース情報はこの個人サイトでなく、道場サイトでお知らせします。

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通訳者にとって自己実現より大切なことは

ストーリーテリングの通訳には商談や学会と違う難しさがあります。
「え…小さな木の根元にバラバラの骨。それがカタカタいって寄り集まったら筋、血管、肉、皮膚がついて…おかしい、と思ったんですけどついていきました。」
 
そう、それでOK!
 
おかしい、というのは日常の自分の常識、論理の声。常識と論理で耳を裁かないで。耳はストーリーテラーの言葉に傾けて。
 
ストーリーテリングの通訳ができればほかの分野は楽です!
 
そりゃ世界民話伝説集を読んで全部覚えれば、たいていのストーリーのあらすじ、登場人物は用意できる。でも語りって生き物。ストーリーテラーと聴衆が出会う旅に少しずつ違う。その違いこそ宝。
 
その違いをとらえるにはその瞬間に耳をすませるしかないのです。その瞬間に語られた言葉を正しく受け取れる耳を持つしかないのです。聴き取った言葉をあつめてストーリーテラーが見ている景色を再現する訳をするしかないのです。
 
いや、それだけやれば十分。ほかに余計なことはいりません。おかしい、と思って常識と論理で裁くのは余計なことです。
 
常識的にはおかしな言葉が耳から入ってもなんともない。どんどん景色に変わっていく。それを平然と語り続ける。
 
そんな通訳者は何事もないように自己消滅、自己超越してゆく。自己主張、自己実現の話題は高校あたりの修養会で卒業しておけば。
 
え?まだ気になる?今の自分を壊すもの、自分をはるかに超えるものに遭遇するしかないね。
 
沢山用意してお待ちしています。
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仕事の英語がもう少しできたらいいのに、という方に

「仕事でもう少し英語ができたほうがいいと思って、スクールを150分週2回に増やしたんですが、どうも…」
―レッスンとレッスンの間の自習は…?
「いえ…忙しくてとてもとても。」
―じゃあ、英語を話すとき頭の中で英作文してるでしょ。
「はい。」

それだと半永久的に今のレベルでしょうね。目的が読む、書く、話すのどれであれ、まず「頭の中で英作文」レベルを脱しましょう。

そのためには「英語の耳」をつくること。

「耳ができている」とは英語という音楽のリズム、ビート、メロディーラインを獲得していること。これを抜かして話す練習をしても聴き手に負担をかける品性の劣る話し方になるばかりです。

耳をつくるためには3か月くらいのうちに100時間、ネイティブが自然に話している音声を聴くこと。週末を抜かして平日190分くらいでしょうか。

このシリーズ、価格の10倍の価値を認めます!

おすすめは朝日出版の100万語聴破シリーズ。たった1300円足らずで自然な語りの音声(音読=文字読み上げ、ではない)、対訳テキストがついています。英語と米語は音楽的には別の言語ですから、どちらか決めるといいですよ。私はイギリスのRP(標準発音)を選んでいます。その理由は次稿にて。

「耳ができた」しるしは

  • はじめて読む文章でも頭の中のネイティブさんが読み上げてくれる。
  • 息遣いから文の長さの予測がつく。
  • 語り手の感情が感じられる。

日本語でのコミュニケーションでは自然にやっていることですね。昔、留学した人が「しばらくすると急に聞こえるようになった」と言っていた、あの感覚です。今は留学しなくても十分できます。こうなると楽です。というよりこの感覚なしで学ぶほうがよほど無理です。相変わらずあちこちでやっていますけどね。

この状態で脳トポグラフィーを撮ると、言語野に英語担当の中枢を分化しています。因果関係か相関関係かは不明です。ただ、言えるのは「人間は異質なものを受け入れることで仕事効率が上がる」ということです。だって、それまで言語中枢全体で日本語を処理していたのに、半分ずつ日本語、英語にわかれても難なく同じかそれ以上の処理ができるのですから。

気をつけるのは、同時に文字を読まないこと。内容が気になるなら事前に読んでおいてください。現代人は目ばかり頼りにする傾向があるので、耳が負けてしまいます。

今までのレッスンではひと月400分、3か月で20時間。これではいつまでも感覚は変わらないと思いますよ。

自分と向き合って、毎日少しずつ積み重ねたことだけが身につく。レッスンは発表の場として利用しましょう。

楽器のレッスンを考えてみて。うまくならないからって家で練習せずに先生のところに通う回数を増やしますか?それを歓迎する先生はなかなか腹黒ですなあ。さて、英語の世界はどうでしょう。

なに?!自習はやっぱり無理?通勤やお風呂の時間を使いたくない?

じゃあ、話せるようになるためにお金と時間を両方使うより、プロの通翻訳者にお金だけ使って時間を買い戻すことをおすすめします。餅は餅屋。いまはみんなが英語餅屋になろうとしてる。正直、もったいないと思ってます。

【お知らせ】
それでもやりたいという方に、上のセオリーを実践するシステムをまもなくご案内いたします。お知らせご希望の方はこちらからどうぞ。来年春にはイギリスのストーリーテリングフェスティバルに一緒に参加しましょうよ。

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私が日常英会話を教えない理由-パン屑欲しけりゃパンを焼け

「冠木さんみたいに英語を話せるようになりたい!日常英会話教えて!」

ごめんなさい。お断りしています。「日常英会話」を練習しても決して私のようにはなりません。

パンくず皆さんが「日常英会話」とお呼びになる部分はパン屑みたいなもの。小麦と、水と、イーストと、バターをそろえて、生地をこねて、ねかせて、焼いたパンがあってはじめて、屑が出る。

屑は作ろうとして作るものじゃない。パンを作ろうとしたときに屑がおのずとできる。

NHKの「鶴瓶の家族に乾杯!」を思い浮かべてください。あれこそ香ばしいパン屑の山です。決して政治や経済の議論は出てこない。おばあちゃんの手料理や、おじいちゃんが50年漁師やってたとか、高校生が仲間とおやつ食べながら中間テストの勉強するとか…日常会話そのもの。でもその不可測さは無限。いわゆる場面別日本語会話フレーズ集ではとても対応できない。よほど回転の速いユーモアセンスのある人なら、まるで別の場面のフレーズを応用して破天荒な会話ができるかもしれないけれど。

場面別フレーズを覚えるのが悪いというわけではありません。それは必要条件であって、十分条件ではありません。そこで満足していると使える英語に自分が使われる。

じゃあどうする?

ひとつのストーリーを、頭を映画館にしながらまるまる自分のものにすることです。とはいっても多くの方は「どうやって?」と思われることでしょう。放っておいてもひとりで物語スイスイ覚えるなんて変人、物好き、偏執狂 just like me。

そこでイギリスのストーリーテラー、ニックとエミリーの語りをもとに、自然に自分と向き合える仕組みを作りました。まもなくご案内します。

気がついたら英語ストーリーテラーになれていますよ。一緒にイギリスのストーリーテリングフェスティバルに行きましょう!きっと日常英会話なんて自転車に乗るみたいに自動化されているはずですよ。

お知らせご希望の方は以下のフォームにご記入ください。準備整い次第ご案内さしあげます。

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